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あおり運転行為に対する厳罰化が施行

弁護士 吉川 哲治

1 各種報道で既にご存じの方も多いでしょうが、社会問題化したいわゆるあおり運転について、これを厳罰化する改正道路交通法が今年の6月30日から施行されました。

ㅤ私自身も普段、車を運転する機会は多く、あおり運転の当事者(加害者はもちろん、被害者にも)にならないよう心がけているつもりですが、知らず知らずにあおり運転をしてしまい、処罰されたら大変なことになってしまいます。私と同じような不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ㅤそこで今回は、どういう場合にあおり運転になってしまうのかを、条文を確認しながら検討していきたいと思います。ただ、厳密な条文解説形式だと皆さんも読む気を無くすでしょうから、精密さを多少薄めて解説していきますので、最後までお付き合い下さい。

2 まずは、条文の確認からです。

第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(中略)
十一 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為

・・・。いきなり長文の引用になってしまい申し訳ありません。
あと、「117条の2の2って何だよ。数字を後にずらせないのか?」と思う方もおられるでしょうが、条文の数字をずらすと、他の法律で引用している条文があればそれも全部改正しなければならず、面倒くさいことこの上ないので、今回のように新たな条文を設ける場合は、枝番を付けて対応することは珍しくありません。

3 気を取り直して条文の確認をしていきますが、ここで大事なのは、『他の車両等の通行を妨害する目的で』という文言です。こういうのは目的規定と言いまして、簡単に言えば、「あおり運転をしてやる!」という明確な目的を持ってやった場合に罪に問われるということです。
逆に言えば、その行為があおり運転に該当し得るものであっても、自分では全くあおり運転をするつもりがなければ、罪には問われません。
ㅤもっとも、その人の内心が実際はどうだったのかを覗き見るなんて、現代科学でも不可能ですから、実際には、ドライブレコーダーなどで確認した車の挙動から、その人の内心の意思を推測することになります。なので、誰が見てもあおり運転だろうというような運転をしておきながら、「そんなつもりはなかった」と言い訳しても通用しませんのでご注意下さい。

4 それと、もう1つ大事なのは、『道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法』という文言です。

イ~ヌまで挙げられている規定は、どれも全ドライバーが守らなければならない交通ルールですが、これら全てを厳密に守っていると自信を持って言える人はそうそういないのではないでしょうか。
ㅤそうすると、これらの規定に違反しただけで、あおり運転とみなされてしまうのではないかと不安に思われるかもしれませんが、決してそうではなく、その違反行為が他の車両に交通の危険を生じさせるおそれがある場合でなければ、あおり運転は成立しないのです。
ㅤ例えば、イはいわゆる「キープレフト(左側通行)」を規定した条文ですが、周辺に他の車両がいない状態でこれに違反しても、あおり運転にはなりません。
ㅤまた、内心では他の車両の通行を妨害してやろうと思っていても、その行為が交通の危険を生じさせるものでなければ、やはりあおり運転にはならないのです。
ㅤもっとも、これらの場合は、その運転行為を客観的に見れば、そもそも他の車両の通行を妨害する目的があったと認定されないでしょう。

5 以上をまとめますと、結局私たちが気にかけておくべきことは、「他の車両の交通に危険を生じさせるような運転をしない」ということではないでしょうか。
ㅤその上で、自分の運転が標準的な運転だと過信せず、自分の運転が他の運転手にはどのように見られるかを常に意識することが大事だと思います。家族や友人を同乗させたときに、自分の運転が危ないかどうかを聞いてみてもいいかも知れません。

6 さて、今度は117条の2の2で、イ~ヌで挙げられている規定を確認していきましょう・・・と思ったのですが、ここまででも十分に長い記事になってしまいました。
ㅤ本当は、今回の記事の目的は、これらの規定を改めて確認することだったのですが、仕方がないので次回以降に回したいと思います。

ㅤなるべく早く第2弾をお送りする予定ですので、今しばらくお待ちください。

以上

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