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友の会第41回総会を振り返る 友の会総会 第2部 記念講演「日本ってどんな国?」~ヤバい日本をあぶり出す~

7月22日、第41回友の会総会が行われました。その記念講演の内容を抜粋してお伝えします。

コロナ禍がもたらしたもの

 コロナ禍は、生活困窮の多様化(老若男女を問わずあらゆる層に困窮が広がる)と日常化(困窮状態が継続して脱却できない)をもたらしました。実質賃金は下がり続け、困窮者のための食糧支援の列にこれまで並んでいなかった層まで並ぶようになり、その数自体も増え続けています。

 また、コロナ禍前に低収入だった世帯ほど、収入の減少幅が大きく、生活必需品の購入にも支障を来すようになり、家庭内でのもめ事も増え、メンタル面により大きなダメージを受けています。格差が更に広がってしまった訳です。

 そして、コロナ禍による生活格差が教育格差に直結し、子ども達の学習格差も広がってしまいました。

 コロナ禍を経て、社会に問題が山積していることが浮き彫りになっています。不遇な状況の人々(主に男性)による暴力と犯罪も続発し、最近では闇バイトとみられる犯罪も多発して、課題解決は待ったなしの状況です。

コロナ禍以前からの日本社会の問題

 こうした社会の問題は、バブル崩壊後の30年間に徐々に進んできたものが、コロナ禍によって一挙に顕在化したと捉えられます。

 かつての高度経済成長からバブル経済へと続く日本社会では(1960年代から80年代)、仕事→家族→教育→仕事という非常に太い資源の流れが一方向に回り続けるという「戦後日本型循環モデル」が形成されていました。父が仕事で稼いだ賃金を家庭に送り、母がその金で家庭を維持しつつ子どもの教育の面倒を見て、子どもは教育を経て新たな労働力となり新卒一括採用によって企業に送り込まれて仕事をするという流れです。しかし、その資源を送る流れは太すぎて、仕事・家庭・教育のそれぞれの分野で資源を枯らしていくこととなり、また、父・母・子はそれぞれの分野で孤立して働くことを強いられていたため、各分野で様々な問題を発生させていました(過労死、バラバラな家族、過度の受験競争、等々)。

 ところが、バブル崩壊後から各分野への資源の流れが細るようになって(賃金や労働時間などの労働条件が劣悪化、教育費や教育意欲の家庭間格差の拡大、低賃金で不安定な仕事に就かざるを得ない層の拡大)、これまでの「戦後日本型循環モデル」は破綻しました。雇用の不安定化により未婚化、晩婚化が進み、子どもの教育費の負担も増し、これが少子化の大きな要因となりました。

 これに対し、日本政府は、「戦後日本型循環モデル」に頼って本来の役割(セーフティネットの充実や教育への投資)を放棄していたのですが、予算を言い訳にセーフティネットを切り下げる有様で、問題の解決に当たろうとはしませんでした。現在の日本社会が抱える問題の最大の責任は、「男は外で仕事・女は家庭で育児と介護」という固定化を「日本型福祉社会」として押しつけ、自らの責任を放棄してきた自民党政治にあります。

家族・仕事・教育それぞれの変化

 まず、家族の分野では、急激な少子高齢化が進み、人口が減少し、単身世帯が増加し、貧困率が上昇しています。共働き化が進み、子育ての外部化を必要としていますが、政府の施策や支出が薄い中で、家族外の子育て資源は不足しています。これにより家族の余裕がなくなる中で、家族関係の破綻も増加しています。

 次に、仕事の分野では、経済成長率や競争力が低下し、賃金が上がらず長時間労働も改善していない中で、「やりがい搾取」とも言うべき状況まで生まれています。高スキル労働者が必要とされているのに、実際には非正規依存が拡大し、雇用形態間・性別間の賃金格差が温存されています。

 そして、教育の分野では、これまでは時期によって変動が見られた「垂直的序列化」と「水平的画一化」が、いずれも強力に推進されるようになりました。それらは児童・生徒の中に出身家庭の社会階層に基づく格差化と排除・抑圧を生み出しています。不安定化・格差化する家族と、要求水準が高まる仕事の狭間で、学校と教員は過重な負担と資源の欠如のもとで疲弊しています。

現状をどう乗り越えるか

 この絶望的な現状を解決する方向性は、「戦後日本型循環モデル」とは異なる新たな社会モデルの構築です。これまでは一方向だった流れを双方向のものとし、ワークライフバランスや男女共同参画を推進し、学校や保育が家族の負担を軽減することで家族間の格差の連鎖を教育で防ぎ、教育の職業的意義を高め、仕事に就いてからも必要に応じて教育を受けられるようにすることで、仕事・家族・教育の各分野の資源を回復・増大させ、いざという時のセーフティネットを充実させるのです。

……感想……

 本田さんの肩書きから連想していた講演の雰囲気とはまるで異なり、エネルギッシュな内容に圧倒されました。また、政府が本来の責任を果たしていないために日本社会が壊れていっているという怒りが話の端々から感じられ、私自身もその怒りを共有するとともに、解決の道筋が示されたことで、その怒りの矛先を示されたように思います。2時間があっという間に過ぎた、とても中身の濃い講演会でした。

この記事の担当者

吉川 哲治
吉川 哲治
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