刑事・少年事件

CASE REPORT事件報告 刑事無罪判決

事件概要

本件は、被告人(A)は「偽造した資料を利用して不正に融資を受けた」として詐欺に問われた事件である。

<検察官の筋書き>

①Aが、X(関係者)に融資の仲介を申し込んだところ、XはY(被害者)に話を持ちかけた。

②YはXと相談した結果、担保が提供されるなら融資に応じることを決定し、Xはその旨をAに伝えた。

③AはXに対して偽造した資料を提供し、その後、AXYの3人が集まったときにも同じ資料を示してYを欺き、その場でYの経営する会社から3000万円の融資を受けた。

 第一審では有罪判決であった。なお、被害金とされる3000万円は利息付きで返済されており、Yに実質的な損害はない。

はじめに

 弁護士の目標として「刑事裁判で無罪判決を獲る」ことが挙げられることがあり、私も密かに目標にしていたのですが、この度、事件を一緒に担当した著名な弁護士に大いに助けられる形ではありましたが、確定無罪判決を獲ることが出来ましたので、簡単に報告させていただきます。

裁判の経過 

 地裁では残念ながら、検察官が起訴した内容で有罪判決(下図)となってしまいました。

 XがAと会って偽造した資料を提供されたという日について、Aのアリバイが成立し、Xの証言を前提にすれば、偽造した資料を提供したのはA以外の誰かにならざるを得ないという事実が明らかになっても、裁判官はこの点を無視したのです。偽造した資料が事前にAの名前でXにFAX送信されていたことから(Aを名乗ってFAX送信することは誰でも出来るのに)、Aが騙したことに変わりはないという理屈でした。

 ところが、ここから事態は急展開します。実は、Xは別件で家宅捜索され、Xのスマートフォンも押収・解析された結果、YがAへの融資話を知ったのは、Aに対して現金が渡されるわずか3時間前であり、XYが担保を条件にAへの融資に応じるかのような相談をしたという筋書きそのものが成立し得ないことが明らかになっていたのです。私たちは偶然この事を知ることができたので、これを証拠として高裁に提出し、検察官の主張する筋書きは成り立たないと主張しました。

 結局、検察官は最初の筋書きでの有罪立証を事実上断念し、新たな筋書きを追加しましたが、高裁では、地裁の有罪判決が破棄され(下図)、新たな筋書きについて審理をやり直すようにという差し戻し判決が出されました。

 その後、地裁で再びXが証言したのですが、その証言は全く信用されず、検察官が追加した新たな筋書きについても信用出来ないと判断され、私たち弁護人が最初から主張していた「Aではない誰かが偽造した資料を提供した=その人物こそが騙した真犯人であるという合理的疑いが残る」との主張が認められ、無事に無罪判決(下図)が出されたのでした。

最後に

 本件については、ここでは書き切れない事実が他にも沢山あり、刑事事件は終わりましたが、別の事件が続いていく予定です。そちらについても、機会があれば報告できればと思っております。

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