刑事・少年事件

名張毒ぶどう酒事件 ~事件から60年 真実は検察(ヤミ)の中!~(中川亜美 弁護士)

この事件は、1961年3月28日夜、三重県と奈良県の県境にある集落の生活改善クラブの宴会の際に提供されたブドウ酒に毒が混入されており、その酒を飲んだ女性十数人の死傷者が発生した事件です。第一審は無罪、その後逆転有罪死刑と
なった亡奥西勝さんは、亡くなるまで再審請求をし、無罪を主張し続けました。約40年の闘いは、妹の岡美代子さんに引き継がれ、現在は名古屋高等裁判所に第10次再審請求異議審が係属しています。この弁護団に加わることは、私が弁護士になった動機でもあります。

テコでも動かない裁判所

この再審請求裁判は大きな問題を抱えていました。それは、裁判所や検察が事件の真相解明に協力的でないことです。第10次再審請求が棄却され、弁護団が異議申立を行ったのが2017年12月8日。弁護団は、裁判所に提出されていない証拠の全面 開示や審理を進めるための申人れを何度も行いました。しかしながら、裁判所は一度検察官に対し意見を求める手続きを行ったのみ(しかも検察官の回答を弁護団に知らせずに放置した)で、2019年11月1日付で裁判長が依願退官するまでのおよそ2年間、何らの実のある審理進行を行いませんでした。弁護団は、その間3度の忌避申立てを行い、特別抗告の申立をも行いましたが、裁判所は、弁護団の忌避申立てが「手続遅延させる目的でのみされたことが明らかである」としました。無駄に時間を経過させているのは裁判所なのに!です。

ついに裁判所が動き出した!

2019年12月1日に後任の裁判長が着任すると、事件はようやく動き出します。裁判所は、検察官に対し、証拠開示等について改めて怠見を求めました。そして、検察官は、開示の必要性は認めないものの、9通の供述調書の存在を認めました。これらは第7次再審請求異議審(2006年)で裁判所から存否を問われた際に検察官が「存在しない」と回答したものでした。裁判所は当該供述調書の開示を検察官に要望し、ついに2020年3月3日、これらの供述調書の開示を受けたのです。しかも、この供述調書の中には、我々がこの裁判で主な再審理由に掲げて主張していた封かん紙に係る供述が記載されているものもあったのです。

2021.3.28 名張事件発生60年行動で支援を訴える日本国民救援会

自白と矛盾する証拠

真犯人が自ら経験や記憶に基づいて供述している場合、その内容は客観的証拠や信用できる第 三者の供述と整合するはずです。しかしながら、今回開示された供述調書には、公民館に運ばれた後もーお酌のために開栓するまで一封かん紙が巻かれていた旨の供述もあり、亡勝さんの自白供述(ぶどう酒が公民館に運ばれた直後に亡勝さんがぶどう酒の蓋を開栓し、封かん紙を取り除いたとする内容)とは矛盾するのです。

「正義」はどこへ

亡勝さんの自白供述と矛盾する内容の供述があるにもかかわらず、「開示する必要がない」とするのは、何か意図があるのでしょう。また、開示された証拠に記載されている丁数番号(当時警察が検察に送致する際に付される番号)に欠番があることから、千頁以上の未開示証拠があることも明らかです。その中には、亡勝さんを無罪たらしめる証拠が眠っていることを確信しています。
ようやく裁判所が重い腰を上げました。検察官の対応には憤りを隠せませんが、一刻も早い再審無罪判決のために、引き続き弁護活動を行っていきます。

この記事の担当者

中川 亜美
中川 亜美
名張毒ぶどう酒事件をきっかけに弁護士を目指し、これまで多くの方々の力添えがあってこそ、この職に就くことができました。人権が蔑ろにされない健やかな社会を目指して日々精進してまいります。
 「困り事や不安事があってどうしたらよいかわからない。」そんな不安が法律で解消されるかもしれません。私は、皆様と法律のパイプ役となり、皆様の健やかな将来を創るお手伝いをしたいと思っております。気軽にご相談ください。

【相談無料】法律のことについて、身近に相談できる人はいますか? 名古屋法律事務所では、弁護士による無料法律相談会を毎月実施しています。詳しくはこちら

名古屋法律事務所への法律相談・お問い合わせは

名古屋駅052-451-7746 みなと事務所052-659-7020 受付時間:月〜金 9:00~17:30

土曜日・夜間の相談ご予約OK

相談予約・お問い合わせ