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ストライキについて

弁護士 樽井直樹

1 労働者のストライキに注目が集まっています。
  セブン&アイホールディングスが、傘下の西武池袋百貨店の株式を、家電量販店のヨドバシと提携するアメリカの投資ファンドに売却することに関して、そごう・西武労働組合が雇用の維持を求めて、8月31日にストライキを実施しました。


  そのほかにも、「個人事業主」として扱われるアマゾンの配達員で結成された労働組合、フランス語学校であるアテネフランセで非常勤講師によるストライキなどが実施されています。
 海外でも、全米自動車組合による自動車大手企業3社に対する同時ストライキによって賃上げを内容とする新しい労働協約の締結、捜索におけるAI利用の制限を求める全米脚本家組合のストライキなど、様々な争議行動が展開されていることが報道されています。

2 労働関係は労働契約を基礎としています。労働契約も契約ですから、当事者である使用者と労働者は対等な立場に立っているはずです。しかし実際には、労働者は使用者が決めた労働条件を受け入れるしかないという弱い立場に立っています。そのため、力関係の差を放置したままにしておくと、労働条件は次々に切り下げられる力が働きます。
 そのため、世界各国では、①労働基準の最低限度を法律で決め、これに反することを許さないようにすること②労働者が労働組合を結成することを認め、団結の力を背景に労働組合が使用者と対等な立場で交渉を行うこと、そして要求を実現するためにストライキを含めた争議行為を行うことを認めることで、是正しようとしています。
 日本おいても、①については、憲法27条2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定し労働基準法などの労働法制による規制が行われています。そして、②については、28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」として、労働基本権という憲法上の権利として保障しています

3 このように、日本においては、ストライキを含む争議行為を行うことが憲法上の権利として保障されているにもかかわらず、1970年代以降、労働組合による争議行為が激減してきました。


 その要因としては、公務員の争議権を禁止するといった制度が取られていること、ストライキを「迷惑」と捉えるような無理解が存在し、労働組合の側にも争議行為を回避するような傾向があることが挙げられると思います。
 急激なインフレが進行しているなか、長年にわたり賃金の上昇が抑えられていた日本においても、賃上げが求められています。賃金の引き上げなど労働条件の向上を実現するためには、労働者の団結した力が不可欠です。
 冒頭で紹介したように、ストライキに注目が集まっていることが、日本において争議権の行使が復活していくことに繋がっていくことが期待されます。

以上

この記事の担当者

樽井 直樹
樽井 直樹
弁護士は、様々な相談事やトラブルを抱えた方に、法的な観点からアドバイスを行い、またその方の利益をまもるために代理人として行動します。私は、まず法律相談活動が弁護士として最も重要な活動であると考えています。不安に思っていたことが、相談を通じて解消し、安心した顔で帰られる姿を見ると、ほっとします。
また、民事事件、刑事事件など様々な事件を通じて、依頼者の立場に立って、利益を実現することに努力します。同時に、弁護士としての個々の事件を通じて、社会的に弱い立場にある方の利益を守ったり、社会的少数者の人権を擁護することを重視しています。
そのような観点から、弁護士会や法律家団体などでの活動にも取り組んでいます。

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