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離婚-その種類や手続に関する基本的な知識について

弁護士 兼松 洋子

1 離婚件数

 令和4年度「離婚に関する統計」(※)によれば、2020年の離婚件数は19万3000組となっています。
 なお、同年の婚姻件数は、52.6万件です。  
 離婚の種類別にみると、
 協議離婚の割合が、88.3%、
 調停離婚の割合が、8.3%、
 審判離婚の割合が、1.2%、
 和解離婚の割合が、1.3%、
 判決離婚の割合が、0.9%となっています。

 ※毎年公表している人口動態統計の令和2年度までの結果をもとに日本において発生した日本人の離婚の動向について、人口動態統計特殊報告として、厚労省がとりまとめたもの。

 上記のうち、協議離婚は、裁判所の手続を介さないものですが、それ以外は、それぞれ裁判所の手続を利用していくこととなります。
 以下、離婚の手続に関する基礎的な事項について、みていきたいと思います。
 離婚については、離婚原因や親権・養育費・慰謝料・財産分与・年金分割などのほかにも、離婚が成立するまでの婚姻費用や子の監護の問題、必要に応じ保護命令の申立等の問題がありますが、それらは、また、別の機会に触れていきたいと思います。

2 協議離婚

(1)協議離婚の届出

 市町村役場(区役所を含む)に備え付けられている離婚届用紙に、夫婦の双方及び成年2人の証人が署名して(押印は任意)、夫婦の本籍地または、届出をする夫の所在地、もしくは届出をする妻の所在地、または双方の所在地の市町村役場に届け出ることにより成立します(民法263条、765条、戸籍法25,26条、戸籍法施行規則57条)。本籍地以外の市町村に届出る場合には、離婚届のほか、戸籍謄本の提出が必要となります。
 協議離婚は、裁判所の関与もなく、夫婦の協議で行われるものですので、後述の離婚原因(民法770条1項1号から5号)に当たる事由がなくとも離婚でき、柔軟な解決が可能であるとともに、一方では必要な検討を十分に出来ないまま離婚届を出してしまう危険性もあります。後に後悔することにもなりかねないので、協議離婚にあたっても、不安な点は弁護士に相談していただくのがよいと思います。

(2)離婚による復氏

 離婚によって氏が変動する者が婚姻中の氏をそのまま称しようとするときは、「離婚の際に称していた氏を称する届」をする必要があります。すなわち、この届を出さなければ婚姻前の氏(旧姓)に戻り、この届を出すと婚姻中の氏をそのまま称することができるということで、婚姻前の氏か婚姻中の氏か、どちらかを自由に選択して称することができるということです。ただし、この届出は離婚の日から3か月以内にする必要があります(民法767条2項)ので、期限には注意が必要です。

(3)親権、子どもの監護

 未成年の子どもがいる場合、必ず親権者を決めて離婚届出用紙に記載しなければなりません(民法819条1項)。この点の記載がないと受理されません。
 また、親権者は子の利益のために監護教育をすべきであり、そのことは民法820条に規定されています。
 協議離婚にあたって、子どもの監護について、子の利益を最も優先して考慮して「面会交流」、「養育費の分担」等を定める必要があります(民法766条)ので、離婚届出用紙にも、その点に関するチェック欄が設けられています。ただし、このチェック欄の記入は受理の要件ではありません。

(4)離婚意思

 離婚届出のときに、法律上の婚姻関係を解消する意思のあること(届出意思があること)が必要です。
 たとえば、離婚届に署名捺印して相手方に渡したものの、届出をする場合には改めて話し合いをすることになっていたにもかかわらず、相手方が勝手に出してしまったような場合、その離婚届は無効(最判昭43.5.24)とされています。 
 協議離婚の届出について、本人の意思に基づかない届出が受理されることを防ぐために、不受理申出制度があります。申出人の本籍地の市町村長に対し不受理届出を提出しておくと市町村長は協議離婚届出を受理しない(本籍地以外に出す場合には2通)
 不受理申出をした後に、正式に離婚意思をもって離婚届を提出することになった場合、事前に、申出人により不受理届を取り下げておかなければ、離婚届が受理されませんので、注意が必要です。

(5)子の氏

 親の一方が離婚によって婚姻前の氏に復しても、子の氏は当然には変更されることはありません。すなわち、子は、親の離婚後も婚姻中の戸籍筆頭者の戸籍に残っています。婚姻中の戸籍筆頭者が親権者となったのであれば、そのまま何の手続も必要ありませんが、離婚によって新たな戸籍を編成した方の親(婚氏の続称を選択したか旧姓に復氏したかに関わりません)が親権者となった場合、子が、その親と同一の戸籍に移るためには、子本人または子が15歳未満のときには親権者が家庭裁判所に子の氏の変更許可申立をすることとなります(婚氏を続称をしている場合、手続をしなくても苗字は同じなので手続は必要ないように思われるかもしれませんが、子を自分が筆頭者となっている戸籍に移すには、この手続が必要です)。そして、戸籍の届け出は、その許可書を添付して入籍届けを提出しておこなうこととなります。

(6)離婚の成立

  協議離婚は離婚届を提出し、受理されたときに成立します。

(7)公正証書による合意

 なお、協議離婚に関して、必要な要件、手続等については以上のとおりですが、離婚の協議が整うか否かについては、親権や養育費・面会交流、慰謝料、財産分与その他夫婦間で協議すべき重大な事項があるのが一般です。
 それらの点について協議が整った場合、履行の確実性のためには、合意内容について公正証書にすることをお勧めします。
 また、条件を決めようと思っても、夫婦間の協議がなかなか整わない場合も多いかと思います。
 公正証書の内容について不安があったり、夫婦間での話し合いが困難だと感じたときなどには、一度是非弁護士に相談してみてください。

3 調停離婚

(1)協議がまとまらない場合(協議離婚以外の離婚)

 夫婦での協議がまとまらず、協議による離婚ができない場合には、裁判所を利用する方法によることとなります。
 しかし、以下に述べるように、いきなり離婚訴訟というわけではありません。

(2)調停前置主義

 「人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件」については、まず、家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない(調停前置主義)とされています。その性質上、対立構造を前提とする訴訟による解決になじみにくいことから、第一次的には家庭裁判所の調停(話し合い)による解決を図るのが妥当であるということで、まず家庭裁判所に対する調停の申立をする必要があるとされているものです。
 調停は、あくまでも話し合いによる解決を目的とするところから、後述の訴訟の場合と異なり、法律上の離婚原因(民法770条1項各号)がなくても、お互いの話し合いによって、解決が期待できるという利点があります。
 また、裁判所の調停委員が、中立な立場に立ちつつも十分にそれぞれの気持ちを聞いたり実情を理解し、解決を仲介してくれることによって、双方が冷静に解決に向かっていくことが期待できます。また、未成年の子どもがいる夫婦の案件では、専門知識を有する調査官が、必要な調査等も行います。

(3)管轄など

 どこの家庭裁判所でおこなうかということについては、相手方の住所地又は合意で定める地の家庭裁判所と決まっています。
 申し立てる際は、上記の家庭裁判所に申立書その他必要書類等を提出します。
 期日が決まると、家庭裁判所から期日の呼び出し状や申立書の写しその他の書類が相手方に送られます。

(4)調停手続き

 決まった調停の期日に出席をします。
 なお、最近では、電話による調停期日やWEB会議による調停期日が開かれるようにもなりました。
 調停によって離婚が成立した場合、「調停離婚」ということになります。
 本人の意思表示が必要ですので、調停成立にあたっては、代理人をつけている場合でも必ず本人が出席しなければなりません。
 離婚の意思自体が折り合わなかったり、条件で争いがあるなど、話し合いが平行線となって調停が成立しない場合、調停への出席がなされず、話し合いが進まない場合などには、調停事件を担当する調停委員会(調停委員2名と家事調停官(裁判官)1名)が調停成立の見込みがないとして調停不成立とし、調停は終了することとなります。
 調停は、申立人による調停の取り下げによっても終了します。

(5)「審判離婚」への移行

 調停が成立しない場合ではあっても、主要な事項については合意をみている場合や、一方の頑なな意思により合意に達しない場合等に、家庭裁判所が職権で行う調停に代わる審判(家事審判法24条)があります。
 出頭の負担の軽減などにも資すること等から、近時、調停に代わる審判は増えているように思われます。
 審判告知の日から2週間内に当事者の一方から異議の申立があれば、当然に効力を失います。

(6)離婚の届出

 離婚自体及び離婚の条件も含め、双方で話し合いがまとまれば、当事者間の合意について調停委員会は調停を成立させます。
 調停離婚は、調停成立の時点で成立します。
 離婚成立から10日以内に、調停調書の謄本1通を添えて、市町村長に対し 離婚届を提出しなければなりません(裁判所による離婚については、証人による署名は不要です)。
 上記(5)の審判離婚は、審判告知の日から2週間内に異議の申立てがなければ確定します。確定した日が、離婚成立日です。
 離婚成立から10日以内に、審判書の謄本と確定証明書各1通を添えて離婚届を提出しなければなりません。

4 裁判離婚

(1)調停前置主義

 離婚を求める場合、調停を経ないで訴訟を提起すると、家庭裁判所の調停に付されます(調停前置主義)。ただし、相手方が生死不明、行方不明、心神喪失の状態にあるなど、裁判所が調停に付することが不適当と認めたときは、調停を経ずに直接離婚の訴えを提起することができます。

(2)管轄

 当事者が普通裁判籍を有する地(夫婦どちらの住所地でも可能ということ)の家庭裁判所が管轄の裁判所となります。

(3)訴えの提起

  上記の管轄の裁判所に訴えを提起します。   

(4)離婚原因

 離婚訴訟において裁判所に離婚請求を認めてもらうには、下記のとおりの離婚原因(民法770条1項1号から5号)が必要です。

  ①不貞行為

  ②悪意の遺棄

  ③3年以上の生死不明

  ④回復見込みのない強度の精神病

  ⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由

 どのような事実をもって、上記各離婚原因に当たるとするか等、裁判所の具体的事実認定については、判例の動向も含め、難しい論点がいろいろとありますので、訴訟の提起に際しては、弁護士に相談、依頼をしていただくのがよいと思います。

(5)離婚の成立

①判決離婚

 離婚訴訟において、離婚請求が認容される判決が確定すると、判決確定時に離婚が成立します。
 確定した判決の謄本と確定証明書各1通を添えて、離婚成立から10日以内に離婚届を提出しなければなりません。

②和解離婚

 離婚する旨の合意する訴訟上の和解によっても、離婚は成立します。訴訟上の和解の成立時に、離婚が成立します。その日から10日以内に離婚届を提出しなければなりません。

5 さいごに 

 具体的に離婚を考えなければならない場合、以上の手続的、形式的なことだけではなく、お一人お一人に深刻なご事情や解決が必要な事柄、不安などがあるかと思います。
 弁護士にご相談いただければ、法律の専門的知識をもとに、適切なアドバイスを致します。ぜひご相談下さい。

この記事の担当者

兼松 洋子
兼松 洋子
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