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戸籍上も「俺」になりたい記者会見レポ
こんにちは。弁護士の水谷です。
先日HP内の「おしらせ」でもご紹介したとおり、私が弁護団の一員を務める『オペなしで!戸籍上も「俺」になりたい裁判』の申立て発表記者会見を7月16日に実施しました。
“なな・い・ろ”でレインボーの日。
そして、「性同一性障害者の性別取扱特例法」施行から17周年を迎える日でもありました。

(記者会見でお話する弁護士水谷と、申立人鈴木げんさん)
■地元メディアだけでなく、全国メディアでも報道頂いています。
静岡新聞(2021年7月17日)
「オペなしで「戸籍上も男性に」 違憲申し立て予定、鈴木さん(浜松)会見 抱えてきた生きづらさを吐露」
https://news.yahoo.co.jp/articles/c4effa48e4da29b75c9febb4c9acc3555e706a00
毎日新聞(2021年7月20日)
「手術受けなくても性別変更認めて 浜松の鈴木さん、家裁申し立てへ /静岡」
https://mainichi.jp/articles/20210720/ddl/k22/040/190000c
朝日新聞(2021年8月3日)
「手術せず「俺」になりたい 男性への性別変更申し立てへ」
https://www.asahi.com/articles/ASP7Z4RGMP7JUTIL01W.html
■げんさんの思い
申立予定の鈴木げんさんは、現在男性として生活していますが、女性の身体をもってうまれたため戸籍や公的書類では女性として表記されています。
子どもの頃から女性としてあつかわれることに苦痛を抱き続けてきましたが、その苦痛の正体が何なのかわからない不安な時間も長かったそうです。クリニックで自分の幼少期からの様々な出来事や葛藤を振り返る中で、「自分には男性としての自覚がある」と気づきました。
男性ホルモンの投与と胸腺除去手術により、体つきが男性的になり、社会から「男性」と見なされるようになって、とても生きやすくなったそうです。
げんさんの姿は、げんさんのお仕事(竹鞄職人)のHPからチラ見することができます。
現行法の下、体内に卵巣が残っているげんさんは、公的書類では「女性」のままです。
男性ホルモンの投与により生殖機能は停止して月経もなく、ご本人にはわざわざ健康上・精神上の負担をうけてまで卵巣を摘出する手術をすることは望んでいません。
社会生活を送る性別と公的書類の性別が一致しないことは、日常生活で様々な選択肢を奪っていきます。
例えば、選挙の際、投票所の本人確認のために使用される情報に性別も含まれていると、投票所で係員に自分が戸籍上「女性」であることが知られてしまう、そのことで偏見を含んだ目で見られるのではないかという不安や生じたり、自分の自覚と異なる性別で扱われる苦痛があったりと、投票に行くのも一苦労。
げんさんは、近所の人と会わなくて済むように家から距離のある役所まで期日前投票に行っているそうです。げんさんのご友人の中には、同じ理由から投票を諦めたという声もあるそうです。
(なお、性別情報を本人確認に利用するかどうかの扱いは自治体によっても異なります。近年、いくつかのメディアでも特集され問題提起されています)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/21119.html
また、げんさんには女性のパートナーがおり、互いに相手を異性と認識して関係を築いているのに、異性カップルとして結婚をすることはできません。
パートナーは、「げんさんから結婚を前提に交際を申し込まれたのに、私たちいつ結婚できるの?」と記者会見でお話してくれました。

(記者会見中の一場面。げんさんのレインボー蝶ネクタイはパートナーの手編み。記者会見のために編んでくれたそうです。ステキ~☆ マイクでお話しているのは同じ愛知県弁護士会の堀江弁護士です。奥は左(手前)から浜松の渡邉弁護士、藤澤弁護士、東京の本多弁護士です。)
そして、げんさんの一番の懸念はいつか自分が死亡した時に、死亡届に「女性」と書かれてしまうのは嫌だということ。
最後の最後まで自分の人生を否定されたくない、という願いです。
自分らしい自分でいたいとの思いで、裁判名は『オペなしで!戸籍上も「俺」になりたい裁判』と名付けました。
■ポイントになる人権
今回問題になる生殖腺除去要件は、既に平成31年の最高裁決定で合憲判断が出されていますが、覆す余地は十分あると思っています。
弁護団としては、性自認を尊重される人格権、意思に反する身体への侵襲を受けない自由、家族形成に関する自己決定権、平等権の4本立てで主張を組み立てていきます。

(記者会見用に弁護団が準備したフリップとくま)

(記者会見には、静岡大学でジェンダー研究を行う笹原恵先生にも同席頂きました。げんさんの人柄の良さとこの問題の深刻さゆえに多彩で頼もしい応援団がたくさん。)
今後もご注目ください。