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菊と星条旗 ~戦後を正しく終わらせるために~(第37回 名古屋法律事務所友の会総会 記念講演会 講師 白井聡さん)

講師 白井聡さん プロフィール

政治学、社会思想研究者。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。3.11を基点に日本現代史を論じた『永続敗戦論ー戦後日本の核心』(太田出版)により、第4回いける本大賞、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。近著に『国体論菊と星条旗』(集英社新書)。

天皇制と日本人のメンタリティ

法人や高額納税者が税優遇を受け、国は戦闘機の購人のために奨大な税金を投入することには表立ったバッシングは起きない一方で、いち芸能人の脱税が問題視されているように、「弱い相手を居丈 高に叩くが、大企業や国家に対しては何も言わない」。白井先生の講演は、そうした国民のメンタリティの低下の原因が天皇制にあり、米国との関係を抜きにして現代の天型制は考えられない、という話から始まりました。

永続敗戦論

戦後、日本人は口先では戦争の後悔と反省に立つと言いつつも、戦争に至った無責任なシステムは改められないままにされています。白井先生の「永続敗戦論」では「敗戦の否認」(=知ってはいるけれども現実的に認めていない。都合の悪いことは見なかったことにする心理)という言葉が使われています。


戦争に対する日本人の態度は、 8月 15 日を「終戦記念日」と呼ぶことに表れています。戦争は日本が敗戦を認めることによって終わったはずなのに、実際にはその負けの現実がごまかされ、敗戦を認めないまま負けを呼び込んだシステムを残し続け、また負ける。つまり、「永続に敗戦」しているのです。

天皇制=国体、近代的システムとしての天皇制

安倍政権が誕生したとき、白井先生は戦後日本の悪い部分を凝縮したひどい政権になると思ったそうです。なぜこんなひどい者が支持されるのかを深掘りして執筆されたのが「国体論」です。


対米従属の関係を解かないと永続敗戦状態を抜けられないのに、日本では日米関係が従属関係ではないことをアピールするために 「 トモダチ作戦」「思いやり予算」など異常に情緒的な言葉を用いています。そこには支配や従属という言葉を使われたくない、という思いが込められているものの、世界中の人々は、日米関係は日本が従属する関係だと思っており、日本人のみがその現実から目をそらしています。ここでも「従属している」という関係が否認されているのです。


なぜそのような特殊なことが起きるのかを考えたとき、白井先生はその原因が天臭制なのではないかと考えるに至りました。

「国体」という観念は近代的な考えで、「天皇の下 に日本の国体を守らなければならない」というのが尊皇攘夷思想です。「国体」観念を語る際のキーワードとして重要なのが「家族国家観」というもので、日本国民は一つの大きな家族であり、天皇は大いなる父であるという観念です。これは独特の社会観・人間観を発生させ、今日に至るまで日本社会に影響を与えています。「家族国家観」では、日本人は自然に仲良くするものだということにされています。家族だから妥協調和すると考えられるのです。


そうすると、権利という観念がそもそも必要なくなり、権利を主張すると 「特権」を主張しているように見られてしまい、社会から冷たい視線を受けます。日本でいまだに権利という観念が浸透していないのも、「国体」観念によるもの です。

日米安保体制=国体そのもの

敗戦後の日米関係は、日本の天皇の上に米国が乗っているという 「国体」であるといえます。日本 は、実際には米国に支配され従属していても、その 事実を否認し続けており、それは家族国家観に通 じるものがあります。

米国は、共通敵ソ連がある間には実際に日本を 利用するために庇護せざるを得ない事実があった ものの、ソ連が消滅して以後は、日本を庇護する必要がなくなり、「庇護から収奪へ」と舵をきることに なりました。日本のエリート層は本来これに抵抗しなければならないのに、グローバリゼーションのか け声のもと、有形無形の国富を多国籍資本に売り 渡すことで権益や地位を保つようになってしまいました。本来それを「売国」というのです。

「国体」はそこに生きる人間をダメにします。日本 が対米従属を否定している限り、自由になりたいと いう意欲も知恵も生まれず、反知性主義(ヘイト等)がはびこるようになります。そうして日本を内側から腐らせ、民主主義 の発展を脅かします。

これからどうすればいいのか

白井先生は、これからの日本について、歴史の中から希望を見いだすべきと話されました。大正デモクラシーの大正期と、経済成長後の1970 年~90年の発展した日本は、日本の国力が蓄えられ、自立できる時代で、天限の影響や米国の支配が緩み、 それらが見えなくなった時代でした。日本は戦争に より悲劇的な形で一度目の「国体の破滅」を迎え、 現在は、二度目の「国体の破滅」を迎える時代にあ ります。二度目の崩壊により国体から離れることができるか、私達は試されています。「一度目は悲劇、二度目は喜劇。笑いながら国体を笑殺しよう」との 言葉で講演が結ばれました。


(文責・弁護士 金井 英人)

この記事の担当者

金井 英人
金井 英人
法曹を志してから弁護士になるまで、人よりだいぶ長い時間がかかってしまいました。私の二十代は挫折の繰り返しでしたが、そうした中で感じた不安や心細さ等の経験を、少しでも皆様の安心のために役立てることができればと思います。

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