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災い転じて福となす 一憲法の理念が根付くきっかけに(酒井 寛弁護士)
弁護士 酒井 寛
2020年度から始まる「大学入学共通テスト」における民間英語試験の導人が延期されました。この制度は、多額の受験料負担を受験生に課すものでありながら、試験を多く受験した学生ほど好成績を得られやすくなり、また、試験会場が都市に偏在するため、地方に居住している学生の交通費や宿泊費の負担が大きくなることから、経済力や居住している地域によって受験機会に格差を生じさせる制腹となっています。文部科学相による「身の丈」発言も記憶に新しいところです。民間英語試験の導人は、学校教育での「グローバル人材」の育成を求める財界 の要望に応じたものと言われています。「個人」を「社会」や「公共」の手段とする教育基本法改悪の意図に沿うものでもあると思われます。
昨年10月に行われた名古屋法律事務所友の会総会記念講演において、京都精華大学の白井聡先生は、この民間英語試験の導入にあたり学生等による反対運動が起きていることについて、戦前は天皇、戦後はアメリカに 「従属」し続けてきた国民性が変わる契機になるかもしれないと述べていました。実際にその反対運動が制度導人を延期に追い込んでいます。「災い転じて福となす」という諺にあるように、法の下の平等という憲法の理念を後退させかねないこの制度の導人を巡る攻防が、最も大切にされるべきは「天皇」でも「アメリカ」でも「財界」でもなく、「個人」であるという憲法の理念が根付くきっかけとなることを願ってやみません。
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