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ここが問題!インボイス制度消費税アップだけが問題ではないインボイス制度 (丸山良恵 税理士)

税理士 丸山 良恵

昨年消費税率が10%にアップされ、軽減税率8%との複数税率となりました。飲食店をはじめとして事業者の経理処理が煩雑となり、国民生活への圧迫も心配されます。しかし、今回の消費税改定の問題はこれだけではありません。4年後にスタートする「インボイス制度」が日本経済をいよいよ危うくするかもしれないのです。

そもそも消費税の計算とは

買い物をすると消費税を含んだ値段を支払います。消費税を支払うのは「お店へ」であって「国へ」ではありません。国に消費税を納めるのは、事業活動を行っている会社や個人事業主です。消費税を申告・納税する事業者を課税事業者といいます。年間売上が1000万円を超える事業者が課税事業者となります。課税事業者は収人に含まれる泊費税から、仕入れや経費など支払いに含まれる泊費税を差し引いた残りを国に納めます。

たとえば、A建設会社の年間の売上が5500ガ円で、支払いが3300万円だったとします。売上に含まれる消費税は500万円、支払いに含まれている消費税は300万円です。500万円から300万円を差し引いた200万円を国に納めます。売上の消費税から支払いの消費税を差し引くことを「仕人 税額控除」といいます。もしこの仕入税額控除ができなければ、A建設会社は500万円を国に納めることとなります。

さきほどのA建設会社の場合、支払いが3300万円でした。このなかにA建設会社の専属下請けのB工務店の880万円の請求書があり、この請求書には登録番号の記載がありませんでした。そうするとインボイス制度のもとでは、880万円に含まれる80万円の消費税は売上の消費税から差し引くことはできませんので、A建設会社は80万円多く消費税を納税することとなります。

小規模事業者がなくなる

では、なぜB工務店の請求書には登録番号の記載がなかったのでしょうか?実は、登録番号は課税事業者しか国からもらうことができません。B工務店の年間売上は880万円で1000万円以下ですので、消費税の免税事業者となり申告納税の義務はありません。B工務店は課税事業者ではないので登録番号はもらえなかったのです。

A建設会社にしてみるとB工務店と取引をすると消費税の納税額が増えてしまします。A建設会社はB工務店との取引をやめるか、値下げを要求してくるでしょう。

B工務店はどうしたらよいのでしょうか?ひとつ方法があります。免税事業者だから登録番号をもらえないのですから、課税事業者になるという選択です。売上が1000万円以下でも課税事業者の選択届出をすれば課税事業者となります。ただし、本来なら納めなくてもよい消費税を納めなくてはなりません。

インボイス制度とは

現在の制度では「仕人税額控除」の条件は、支払先からの請求書や領収書(以下、「請求書等」)を保存することです。インボイス制度のもとでは新たな条件が加わります。それは請求書等に登録番号を記載することです。登録番号が記載された請求書等が「インボイス」と呼ばれるものです。2023年10月からは、登録番号の記載のない請求書等では仕入税額控除ができなくなるのです。これがインボイス制度です。

インボイス制度

インボイス制度により、小規模事業者の経営は成り立たなくなるかもしれません。日本経済を支えている中小業者に打撃を与え、日本経済を危うくする、このような制度は即刻中止すべきです。

(注)①課税事業者の判定基準である年間売上は、2年前の「消費税の対象となる売上」を基準とします。
   ②消費税は、国だけでなく地方公共団体にも配分されます。

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