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人の名付けにルールはあるの?
人の命名に関する法律
先日,日本の理化学研究所が113番元素の命名権を獲得したというニュースがありました。元素の命名権は国際純正・応用化学連合(IUPAC)という機関が国際的な命名法を定めており,そのルールに従ってIUPACから発見者に命名権が与えられるという仕組みになっているそうです。
では,私達にとって一番身近な,人の命名にはどのようなルールがあるのでしょうか。ちょっとだけ整理してみたいと思います。
人の命名について定めている法律は「戸籍法」です。ところが,戸籍法には,命名のルールについて「子の名には,常用平易な文字を用いなければならない。」(50条)という定めしかありません。つまり,「常用平易な文字」を使いさえすれば,あとは特にこうしなければならないというルールはないのです。
戸籍法
第五十条
1 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
2 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。
ちなみに,「常用平易な文字」とは,戸籍法施行規則60条によると,常用漢字(2136字),戸籍法施行規則別表に掲げられた漢字,そして,平仮名または片仮名ということになっています。
戸籍法施行規則
第六十条
戸籍法第五十条第二項の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
一 常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)二 別表第二に掲げる漢字三 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)
つまり,法律上使用可能な文字さえ使えば,原則としてどのような名前でもつけられるということになっているわけです。最近は「キラキラネーム」などと言われるように,工夫を凝らした名付けをする方々も増えているようですが,日本の法律では人の命名はかなり自由に認められているといえます。
なお,常用漢字表と別表第二に掲げられている漢字は以下のようなものです。
【常用漢字表】
http://kokugo.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf
【別表第二】
http://www.moj.go.jp/content/001131003.pdf
命名権の濫用
そこで思い出されるのが,90年代に話題となった「悪魔ちゃん」ですが,この名前も戸籍法上は常用漢字ですので違法にはなりません。では何故この名前が認められなかったかというと,裁判所により「命名権の濫用(らんよう)」という理論が適用されたことによります。もっとも,人の命名について「命名権」というものを定めている法律はなく,誰に命名権があると考えるべきかについても諸説ありますが,「子の福祉」という観点から,あまりにも子の福祉を害する名前を付けることは「命名権の濫用」とされ,認められないことがあるのです。
とはいっても,これは極端なケースで,通常の名付けにおいて「命名権の濫用」になるということはなかなかありませんが,裁判例からすると,これだけは守るべきルールとして,「子どものためを思って名付けをする」ということは求められていると言えそうです(当たり前のことなのですが)。
この記事の担当者
- 法曹を志してから弁護士になるまで、人よりだいぶ長い時間がかかってしまいました。私の二十代は挫折の繰り返しでしたが、そうした中で感じた不安や心細さ等の経験を、少しでも皆様の安心のために役立てることができればと思います。
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