憲法

警察の監視活動はどこまで許されるか~大垣警察市民監視事件提訴~

弁護士 樽井直樹

警察による市民監視

2014年7月24日に朝日新聞が「岐阜県警が個人情報を漏洩」との記事を掲載し、「岐阜県大垣市での風力発電施設建設をめぐり,同県大垣署が事業者の中部電力子会社に、反対住民の過去の活動や関係のない市民活動家、法律事務所の実名を挙げ、連携を警戒するよう助言したうえ、学歴、または病歴、年齢など計6人の個人情報を漏らしていた」と報道しました。

今、日本社会では、警察や自衛隊など公権力による一般市民の監視(犯罪を犯したという嫌疑で捜査をするのではない,幅広い情報収集活動)が行われています。ムスリム監視捜査事件では、警察がムスリムを対象とした大規模な監視を行っていたことが、警察の内部資料がインターネットを通じて流出して明らかになりました。自衛隊情報監視隊による市民のイラク派遣反対運動、地方議会の動向、マスコミの取材活動を詳細に記載した内部文書が明らかになり、自衛隊による市民監視が継続的に行われてきたことも知られるようになりました。

朝日新聞の報道によって明らかになった大垣警察の情報収集活動、提供行為については、情報を収集された市民が、中部電力の子会社に対して証拠保全手続を行い、大垣警察との協議内容を記録した文書を入手しています。そこには、警察が、一私企業の環境破壊をもたらす可能性のある事業活動に関して反対運動が起こることを危惧・警戒して、当該私企業に対し警察が収集した個人に関する情報を提供し、反対運動が展開することのないように企業と協議、情報交換をしていたことが、生々しく記録されています。いったいこのようなことが許されていいのでしょうか。

法的な問題点

提供された個人情報は、本人たちが公表している事項だけではありません。団体への所属や今まで参加した市民運動歴など「承諾なくみだりに収集されたくない情報」や、病歴や学歴など秘匿されるべき個人情報まで含まれています。このような情報を、警察が継続的に収集、保管し、今回のように外部への提供を含めた利用をすることは、憲法13条で保障された個人のプライバシー権を侵害します。

それだけでなく、警察に監視されているのを恐れ,憲法21条で保障されている、個人が表現活動やコミュニケーション活動を通じて人や社会に働きかけ、正当な利益を守ったりよりよい社会を作っていくという自由が妨げられ、民主政の過程が傷つけられてしまいます。

もちろん、犯罪の防止や安全の確保のため、狭い意味での犯罪捜査に限らない警察の活動が必要な分野がありますし、警察のそのような活動に対して一定の期待が寄せられているのも事実です。しかし、強大な力を持つ警察権力が市民社会に無制限に介入することを許せば、社会から自由や民主主義が失われることにつながりかねません。

そこで、憲法を武器に、警察による市民監視に制限を加えることが必要だと考えています。

提訴しました

12月21日に、監視の対象となっていた4名の市民が、大垣警察を設置している岐阜県を相手に、国家賠償を求める裁判を提起しました。

警察によるGPS捜査に関する裁判にかかわっていたこともあり、岐阜の弁護士仲間から弁護団に加わることを要請され、私も弁護団の一員に名を連ねています。2017年7月1日に開催する当事務所友の会総会に講師として参加される愛敬浩二名古屋大学教授も本件に大変関心を持たれ、憲法研究者として弁護団へのアドバイスをして下さっています。

市民たちは、この裁判を「大垣警察市民監視違憲訴訟」と名付け、「もの言う」自由を守る会を結成して支援をつのっています。是非、ご協力をお願いします。

*なお、日本評論社が発行する「法学セミナー」2016年11月号では、「市民の政治的表現の自由とプライバシー」という特集を行い、市民監視事件の実態報告と憲法研究者による理論的解明が行われています。その中には、本事件弁護団長の山田秀樹弁護士の事件報告も掲載されています。

 

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