スタッフブログ

戦争体験を語り継ぐ世代を超えて遺したいもの

戦後80年が過ぎ、戦前の雰囲気が漂い平和憲法が脅かされつつある今だからこそ戦争を経験していない世代に遺したいものをご紹介します。

『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』

鴻上尚史
講談社現代新書|講談社

 太平洋戦争の末期の”特別攻撃隊”。戦死を前提とする攻撃で、多数の若者たちが命を落としました。しかし、特攻兵佐々木友次氏は合計9回出撃し、9回生還し、戦後の日本を生き抜き2016年2月に96歳で亡くなりました。この本は、鴻上尚史氏の佐々木氏へのインタビューの記録です。飛行機がただ好きだった青年が、なぜ上官の命令に背き、命の尊厳を守りぬけたのか。彼は上官らに「飛行機は飛ぶためのもので浮力があるから、落下スピードは爆弾よりも遙かに劣る。爆弾を投下した方がずっと速いスピードで敵艦に到達する。死んだら終わりだが、生きて帰ればまた攻撃が出来る。」と言いました。作戦論として、特攻の不合理さを見事に突く言葉です。しかし、上官らは一言も反論出来ないにもかかわらず、彼が帰還する度に「どうしても死んでこい。」と繰り返しました。彼の信念に基づく奇跡とも言うべき行動が、特攻がいかに非合理的かつ非人間的な作戦だったかを物語っています。理不尽な戦争遂行の責任を浮き彫りにする貴重な一冊です。

(弁護士 松本 篤周)

『はだしのゲン』

中沢啓治
中公文庫|中央公論新社

 岐阜県職員組合が、戦後80年記念公演会として、講談師の神田香織さんを招いた講談「はだしのゲン」を聴きにいきました。生で講談を聴いたのは初めてだったのですが、原作のワンシーン、ワンシーンが目に浮かんでくる、迫力ある語りに圧倒されました。
 いうまでもなく、原作漫画の「はだしのゲン」は、作者の中沢啓治さんの被爆体験を作品化したもので、1972年から「少年ジャンプ」に連載されたそうですが、私は70年代末の小学生時代に、単行本化されたもので読みました。原爆症認定訴訟に参加した私にとって、原爆について知った最初の経験が「はだしのゲン」との出会いでした。
 父が反戦思想を持っていたために家族全体が非国民扱いされる中、主人公のゲンと弟の進次とのユーモアのあるやりとり、原爆投下と父、姉、弟を助けることができなかった苦しみ、生き残った者にも襲いかかる健康被害など、原爆被害を多角的に捉えた不朽の名作です。

(弁護士 樽井 直樹)

『この世界の片隅に』

Ⓒ2019こうの史代・コアミックス / 「この世界の片隅に」製作委員会

 この映画は、第二次世界大戦下の広島・呉を舞台に、主人公『すず』が戦火の中でも懸命に日々を生きる姿を描いた作品です。
 本作の特徴は、「市井の人々の生活」に焦点を当てていることです。配給の限られた食材を工夫して料理を作り、空襲の合間に洗濯や炊事を続ける「何気ない日常が、戦争によって少しずつ削られていく様子」が淡々と描かれます。戦時下の日常が丁寧に描写されることで、戦争による被害の深刻さがより浮き彫りになり、失われていく「普通の暮らし」の尊さを再認識しました。そして、この作品を通して戦時下の生活を追体験することで、人々の幸福を奪う戦争の非人道性に強く憤りを感じました。
 人々のささやかな日常の価値をあらためて思い起こさせてくれる作品です。

(弁護士 吉川 哲治)

『ひめゆり平和祈念資料館』

〈ひめゆりの塔〉
沖縄戦末期に沖縄陸軍病院第三外科が置かれた壕の跡に立つ慰霊碑。 沖縄県糸満市にある。
慰霊碑の名称は、第二次世界大戦末期に第三外科壕に学徒隊として従軍していたひめゆり学徒隊にちなんでいる。

 今年の5月、ひめゆり平和祈念資料館を訪れました。ひめゆりの塔の前には色とりどりのお菓子が積まれ、訪れた方がカバンから手持ちのお菓子を供える光景が目に浮かぶようでした。
 平和祈念資料館の展示は、ご自身の目でご覧になっていただきたいですし、とてもこの紙面には語り尽くせないほどですから、みなさんにもぜひ一度、訪れていただきたい場所です。
 展示の最後には沖縄戦で亡くなった生徒と教師227人の写真と名前が並んでいます。その説明によれば、教師の中に、生徒達との自決を決断し、または自決をするように求めた者がいたのです。
 教師も戦争の犠牲者であり、「捕虜になるくらいなら死を選ぶべき」という風潮があったのは確かですが、教師達は生徒らが自決する、命が失われるという意味を真に理解していたのでしょうか。
 別の展示では、ある日本兵が生徒達の自決を防ぐべく、生徒達の手榴弾を自分の食べ物と交換したとの話もありました。兵士の中にさえそのような人がいたのに、どうして彼女らに慕われていた先生たちは、生徒の命が奪われることに疑いを持たなかったのでしょうか。
 国の作り出した風潮にとらわれ、生徒たちの命を奪った教師にも、そのような教師を生み出した当時の政府に対しても、ひどく憤りを覚えながら、227枚の写真を後にしました。
 資料館を出ると、とてもよい天気でした。心地よく風が吹く、もう何にもおびやかされない、静かで穏やかな場所でした。

(弁護士 平野 弥優)

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