憲法
続 憲法ってなに??〜基本原則とアレコレ〜のりちゃんのノリノリ憲法
のりちゃん…世界平和を願いながら日々法律を勉強しているけど、解らないことだらけ。 MEGANE…某弁護士。

前回まで憲法についていろいろ学んできたけど、もっともっと憲法について理解を深めたいな。何か良い題材はないかな?

今年(2025年 以下同じ)の参議院議員選挙で参政党が躍進したことは知っているかな?

知ってる。躍進もしたけど、「排外主義的だ」などの批判もたくさん受けているみたいだね。

参政党は「創憲」を提唱し、今年5月に「新日本憲法(構想案)」という独自の憲法案を発表したんだ。

「創憲」??「改憲」は憲法を改正するということだから、創憲は憲法を作るってことかな。

正解!今ある憲法とは違う新しい憲法を一から作り直そうという動きなんだ。

えーっ、でも、今の日本国憲法には、二度と戦前のようなことを繰り返さないために、反省を踏まえて、権力の暴走が起きないように、思想良心の自由(19条)とか表現の自由(21条)などが定められているって、あらくさ123号で勉強したよ。そういう大事な憲法を一から作り直してしまうって、どういうことなのかな?

そう!鋭い指摘だね。今回は参政党の憲法案をみながら改めて日本国憲法の理念について考えてみようと思うんだ。ではまず、日本国憲法の基本原則って知っているかな?

もちろん!国民主権、平和主義、基本的人権の尊重だよ。小学校で習ったよ!

大正解!実は、参政党の憲法案には、思想良心の自由とか表現の自由といった個人の自由や権利に関する規定のほとんどがなくなっているんだ。

えーっ、それじゃ憲法としての意味がなくなっちゃうじゃん。前に言っていた、政府の意見に反対する投稿にイイネ!押した人を逮捕できるようになるかもしれないってこと?

よく覚えてるね。憲法に規定がないなら、その部分は法律で何を決めてもOKということになるよね。そうすると、今の香港のように、多数決で決めさえすれば、思想良心の自由や表現の自由が踏みにじられるような法律でも作ることが可能になってしまうんだ。
そんな法律ができたら、SNSやブログなどで自分の意見を気軽に発表することなんてできなくなってしまうよ。

前に教えてもらった「治安維持法」のように、天皇制反対と主張すると死刑判決を受けてしまうような法律も作れてしまうの?

憲法的には可能になってしまうね。
また、参政党の憲法案には、今の日本国憲法で定められている「法の下の平等」(14条)に関する規定もないんだ。
だから、たとえば、外国人に対する差別を正面から認めるような法律なんてものが作られかねない。さらには、貴族制度や奴隷制度を作ることだって許されかねないよ。

えーっ!!
この時代に?

さらに問題なのは、今の日本国憲法で定められている、拷問の禁止(36条)や自白の強要の禁止(38条)といった、刑事手続についての規定も一切なくなっていることだ。何の罪も犯していない人に対して拷問によって自白を強要し、罪をでっち上げるなんてこともできてしまうんだ。

聞いているだけで怖くなって震えてきちゃうよ。そのほかにどんな問題点があるの?

参政党の憲法案には、「国民の要件」として、「日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める」とされているんだけど、どう思う?

「日本を大切にする心」自体は悪いことでないと思うけど…。

そうだね。でも、そのような「心」は誰かから押しつけられるものではないよね。まさに「思想良心の自由」の問題だと思うけど、先ほども述べたように、そもそも、この憲法案には「思想良心の自由」の規定がない。

確かに、好きなもの、大切にしたいものは人それぞれだから、その個人の「心」の持ち方を憲法で強制するのはおかしいと思うなぁ。

じゃあ「日本を大切にする心」というのはどういうことだと思う?

うーん、そう言われてみると具体的に答えられないや。

とてもあいまいだよね。実はこの憲法案には注釈がついていて、この「日本を大切にする心」の意味については、「我が国に対する害意がないことをもって足りると解すべき」とされているんだ。だけど、この「害意がないこと」というのもあいまいであることには変わりがないよね。

「害意」もよくわからないし、「害意がないこと」をどうやって証明するかもよくわからないなあ。

そうだよね。だから、そのときどきの権力者の都合や気まぐれによって「お前は日本を大切にしていない」と判断され、最悪の場合には国籍を剥奪されてしまいかねないんだ。

ひえーっ。

さっきも言ったけど、拷問の禁止や自白強要の禁止の規定もなくなっているから、拷問によって、日本に対する「害意」がないかどうかを確認することすら可能になってしまいかねないよ。

なんてこった!今の日本国憲法にある思想良心の自由や拷問の禁止などの規定がどんなに大切なものなのかが実感として分かってきたよ。

そもそも、「日本を大切にする心」を有する人しか国民として認めないということは、いろいろな考え方を有する人々が互いに尊重し合って共存していくという今の日本国憲法の根本の理念と真っ向から反するものというべきだと思うよ。

みんなで仲良く幸せに暮らしたいだけなのになあ。

ほかにも、参政党の憲法案では、第1条において「日本は、天皇のしらす君民一体の国家である」「天皇は、国民の幸せを祈る神聖な存在として侵してはならない」と天皇を元首として扱うような規定がなされているよ。
また、第4条では「国は、主権を有し、独立して自ら決定する権限を有する」というように、主権が「国家」にあるということが書かれている。
他方、「国民主権」という言葉は一切書かれていないんだ。

もはや民主主義の国ではなくなってしまうということだね…。

そのほかにも、「土地は公共の財産」といった私有財産制を否定するような規定や「自衛軍」を保持するといった(この点については、あらくさ124号と125号で詳しくお話しをしているよ)、今の日本国憲法の基本的な考え方とは相容れないような規定がたくさんあるんだ。

憲法って、時の政府が暴走しないように権力をしばるものだったはずなのに、参政党の憲法案は何だか国民をしばりつけるような内容になっているよね。今までにもまして、今の日本国憲法の理念を大切に大切に守っていかなくてはいけないと思えてきたよ。
日本国憲法
第14条
①すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
②華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第19条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第21条
①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第36条
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第38条
①何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
②強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
③何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

































