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どの程度の別居期間で離婚が認められるのか?

 弁護士 松本 篤周

 夫婦の間での対立が決定的となり、当事者がもう離婚するしかないと思うようになった。

 この場合、夫婦の両方が合意すれば協議離婚が成立します。しかし、夫婦の一方でも、離婚に応じない場合は協議離婚はできません。しかし、離婚原因があれば、離婚裁判を起こして、裁判所が判決で強制的に離婚を認めれば、離婚が成立します。

離婚裁判で認められる離婚原因

 民法770条では、離婚原因として以下の項目が定められています。

 第770条(2024年5月21日改正法公布、施行日未定(2年以内))

 (現行法の⑤「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」が削除された)

1 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

   ①配偶者に不貞な行為があったとき。

   ②配偶者から悪意で遺棄されたとき。

   ③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

   ④その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第1号から第3号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

 別居期間にしぼって考えてみます。

 長期間の別居は、上記1項④号の事情の一つになります

 別居によって離婚を認める理由は、別居期間が長いことは、もう元には戻らないという、破綻状態を現している十条の一つと考えられるからです。破綻しているということは1項④号(改正法)の婚姻を継続し難い重大な事由にあたるので、離婚原因となるのです。

 逆に別居期間が短いケースでは、実際に仲が悪いとしてもまだ元に戻る可能性がないとは断言できないので、破綻として認められない傾向があります。

裁判所が離婚を認める別居期間の相場は3〜5年程度

 離婚が認められる別居期間について、以前は5年以上が必要という傾向がありましたが、現在の目安は3〜5年間程度と言われています。実際には別居期間以外の細かい事情も含めて考慮されます。

 また、同居期間と別居期間の相関関係が、離婚を認めるかどうかの判断に影響します。

 同居期間が短ければ、別居期間が短くても離婚が認められやすくなると言えます。

家庭内別居で離婚が認められることもある

 通常別居というと、夫婦が別の場所で生活することでが、離婚原因の判断では、同じ家に住んでいてもまったく接触・コミュニケーションがないという、いわゆる家庭内別居も考慮される可能性がないわけではありません。要するに、破綻(元に戻る可能性がない)かどうかで離婚原因を判断します。しかし、家庭内別居は、実際に裁判では立証のハードルが高く、主張と立証のやり方・工夫次第で結論が大きく変わります。

別居期間による離婚に関する裁判例(地裁で棄却、高裁で逆転離婚認容)

 別居期間が比較的短く、地裁で離婚が認められなかったが、高裁で逆転で離婚が認められたケースを紹介します。

①東京高等裁判所平成29年06月28日判決 (同居期間約10年)

 地裁が離婚を認めず、高裁が逆転で離婚を認めた

 妻X(原告・控訴人)が、夫Y(被告・被控訴人)に対して、流産や妊娠中の冷淡な対応や無配慮な言動、育児への非協力等によって婚姻関係は破綻したとし、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると主張して、離婚等を求めたところ、X主張の事実は一般に子をもつ夫婦間で日常的に生じうる不満であり、Yの言動は、通常、婚姻関係を破綻させるような有責の行為であるとは認め難いとして離婚請求を棄却した原審に対して、Xが控訴した事案において、夫婦の役割分担等に関する見解の相違を克服できないまま、Xは離婚意思を強固にしており、その意思に翻意の可能性は見いだし難いうえに、別居期間は3年5か月以上に及び、別居後は双方に復縁に向けた具体的な動きもないことから、既に夫婦げんかという範疇にとどまるものではなく、X・Yいずれかに一方的に非があるというわけではないが、婚姻関係は既に修復不能なまでに破綻しているものといわざるをえないとして、原判決が取り消され、Xの離婚請求等が認容された事例。

②東京高判平成28年5月25日判決  (同居期間約9年)

 妻X(原告・控訴人)が、夫Y(被告・被控訴人)に対して、婚姻関係は破綻しており、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、未成年者である長男Aの親権者をXと定めて離婚すること並びに養育費及び慰謝料の各支払を求めたところ、原審が、婚姻を継続し難い重大な事由があるとまでは認められないとして、Xの請求をすべて棄却したために、Xが離婚請求の認容のみを求めて控訴した事案において、本件夫婦の別居期間の長さ(4年10か月間余)は婚姻関係の破綻を基礎づける事情ということができ、その間、Yにより修復に向けた具体的な働き掛けがあったことがうかがわれないこと、Xの離婚意思は強固であり、Yの修復意思が強いものであるとはいい難いことからすると、X・Yの婚姻関係は既に破綻しており回復の見込みがないと認めるべきであるとして、原判決中離婚請求に係る部分が取り消され、離婚請求が認められ、Aの親権者がYと定められた事例。

 離婚事件は個々のケースによって事情が様々です。

 いずれにしても悩んでおられる方は一度弁護士に御相談されることをおすすめします。

この記事の担当者

松本 篤周
松本 篤周
弁護士法人 名古屋法律事務所 所長。
目指す弁護士像
・依頼者の立場に立ち、その利益を最大限に実現するとともに、実質的な満足が得られるよう依頼者とのコミュニケーションをはかり、スキルを常に磨く努力すること
・特に大企業や行政の壁にぶつかって苦しんでいる人のために、ともに手を携えて壁を打ち破る取り組みに全力を尽くすこと

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