憲法
憲法9条のピンチ!!のりちゃんのノリノリ憲法!
のりちゃん…世界平和を願いながら日々法律を勉強しているけど、解らないことだらけ。 MEGANE…某弁護士。
さて、ノリちゃん。今の憲法は、 どんなことを踏まえて作られたかを覚えているかな。
戦前のような権力の暴走が起きないようにという反省のもと作られたんだよね。
そうだね。じゃあ、時の権力者が憲法に反することをしたらどうなると思う?
ダメだよ!!憲法の意味なくなっちゃうよ!
実は、2014年に当時の安倍内閣が、これまで憲法違反として いた「集団的自衛権」を、合憲としたんだ。そして翌年、圧倒的な世論の反対や憲法学者の違憲だという意見を押し切って、「集団的自衛権」を具体化する安保関連法制を強行採決で成立させたんだ。
え?国民が反対しているのに? 憲法違反なのに?
それだけじゃないよ。岸田内閣では、さらに「敵基地攻撃能力」「長距離弾道ミサイル」も合憲、防衛費2倍化などと言っているんだ。2022年には、いわゆる安保3文書を閣議決定したんだけど、その内容は、「専守防衛」を完全にかなぐりすて、「戦争国家づくり」をさらに進める、とても危険な内容なんだ。
9条の意味ないじゃん!日本に高い攻撃能力があることがわかったら、危険な国のように思われちゃうんじゃない?
そうだね。防衛費2倍になると、アメリカと中国に次いで世界第3位になってしまうけど、どう思うかな。
勝手なイメージだけど、その2国に続くのは平和な感じがしないし、軍事大国の仲間入りみたい。周りの国がビックリするんじゃないかなあ。
そうだよね。しかも、ただでさえ削られている教育や福祉、年金、医療の予算が更に削られ、さらに物価上昇・社会保険料等の増額の中で苦しんでいる国民に、防衛費のための増税の負担に苦しむ事になりかねないんだ。
えー!! もっと 苦しくなるの?
ところでノリちゃん、この9条を改正して、軍隊を持てるようにするべきだという憲法改正論があることは知っているかな?
聞いたことあるよ。
自民党は、9条2項を改正して自衛のための軍隊を持てるように変えるべきだと主張してきたんだ。最近は、9条そのものは変えずに、9条「の2」を新しく作って「自衛隊」の存在を位置づけるという改正を主張しているんだ。
私は9条って素晴らしいと思うんだけど、今の9条じゃ何か問題があるの?
それについて、安倍元首相は、9条を改正したい理由として「いまだに自衛隊は憲法違反という憲法学者が多いが、自衛隊員の子どもさんが学校で、自衛隊は憲法違反と言われたら、肩身の狭い思いをするからかわいそうだ。」というようなことを言っていたんだ。
えーっ?なにそれ!安保法制のときは「違憲だ」っていう憲法学者を無視してたよね。
そうだったね。いかにもご都合主義という気がするね。
しかも、友達の親の職業を「憲法違反だ!」って言う子がどこにいるの?もしやホンネとタテマエってやつ?
そうだね。私は、9条改正の本当の動機は、アメリカと一緒になって集団的自衛権を行使し、そのために敵基地攻撃を可能にし、それを支える防衛費を抜本的に増やしたいから、その足かせになる9条を取り払いたい、ということにあるんだろうと思うんだ。
さっきの話で何度も「防衛費を2倍に」って言ってるけど、今のままでは国を守れないの?
細かい装備の内容に立ち入る事は出来ないけど、ロシアの防衛予算が年間約6兆円強、日本が年間約5兆円弱だから、ロシアがこの予算でウクライナ侵攻を行っている事を考えると、これはもう今でも十分すぎるくらいと言って良いんじゃないかな。
そうしたら、今の9条でも日本国民に何の不都合もないよね。
じゃあ、自衛隊は災害時の救援活動も頑張ってくれてるから、「9条自体は全く変えず、9条2項で自衛隊を位置づけるだけ。」と説明を受けたら、どう思うかな。
そういう説明だと私も何となく「それならいいか。」と思ってしまいそうなんだけど・・・。
そうだね。一見、憲法を現状に合わせるだけのようにも見えるね。でもそこに落とし穴があるんだ。
どういうこと?
今の憲法は、9条で、とにかく戦争禁止・武力保持禁止と書いてあるだけだから、軍事力を持ったときに限定するような条文は一切無いんだ。でも仮に「自衛隊という軍隊を持つ」と憲法に書き込んでしまうと、憲法上に自衛隊という軍隊の存在は認められているが、その装備や行動には限定はない。つまり、9条はあるが、9条の2はその例外として「自衛隊なら何でもOK」となりかねない、という重大な危険がひそんでいるんだよ。
そんなリスクがあるなんて聞いてないよ!!
そうだね。ほかにも9条改憲については様々な見解があるけど、その話は、なかなかややこしいので、時間があるときにしようか。
うん、わかった。でも、憲法って、そんなに簡単には変えられないんだよね?
そうだね。憲法を変えるには、まず衆議院と参議院の総議員の3分2以上の賛成があってはじめて発議することができて、それだけではなくその発議された改憲案を国民投票にかけて、その過半数の賛成があって初めて改正が成立するとされているんだ。
そっか。それなら、反対する国会議員の人達が3分の1以上いれば改正の提案も出来ないし、国民投票すれば半分以上の人が賛成するのは簡単ではないという気がするから、大丈夫なんじゃないかな。
それがそうとも言い切れないんだ。今の国会議員の党派別の構成を見ると、9条改正に積極的な政党の議員数を数えると、衆議院でも参議院でも3分の2を超えているんだ。それに、さっきの改憲案の説明だと「それならいいか」と安心して賛成する人が多くなる事もありうると思うんだ。
そっか!「よくわかんないけど、まいっか!」じゃすまないくらい大変なことじゃない!一体私達はどうしたらいいのかな。
戦争が絶えない世界の中で、「9条は世界の宝」という言葉があるんだけど、「未来は若者のものである。」という言葉もあるね。特に若い人達がこれからも、戦争に巻き込まれることなく平和な社会で生きていけるようにするためにも、平和を求める運動や政治のあり方に注目したり、関わっていくことが大切なんじゃないかな。
うん。憲法9条の話って難しくて避けてたけど、自分たちの将来だもん、自分で考えたいと思ったよ。
改憲の問題はね、9条だけの話じゃないんだよ。ほかにも「緊急事態のときに、政府の判断で人権を制限できるようにしたり、国会で国会議員の任期を延長したり、復活できるようにする」という話もあるんだ。次回は、この「緊急事態条項」について考えてみようか。
政府が人権を制限する? どうゆうこと? 早く聞きたい!!