子ども

夫の育児休暇について~体験をふまえて~

弁護士 倉知孝匡

なぜか書いている記事が動物やロボットばかりですが,今回は,夫の育児休暇についてです。

1 夫にも育児休暇が必要な理由

夫にも育児休暇は認められていますが,まだまだ育児休暇を取得する方は少ないようです。一方で,夫でも育児休暇を取得して,育児,そして家事をしている方もたしかにいます。
では,育児休暇がなぜできたのでしょうか。そもそも夫も育児休暇を取ることの必要性やメリットはどこにあるのでしょうか。まずは,これを見ていきたいと思います。なお,ここでの夫婦には,婚姻届を提出している夫婦だけでなく,婚姻届は提出していないけれども夫婦として生活しているカップルも含みます。

(1)出産によるダメージ

育児休暇には子どものためという面があるのは当然ですが,実は,出産をした妻のケアという面が非常に重要です。
出産時の極度の疲労,出産に伴った大量の出血,骨盤を始めとする骨格の急激な変化,ホルモンバランスの影響などによって体調を崩すなど,出産によって母体には大きなダメージがあります。
程度の差はあれど,出産前,ましてや妊娠前のように動けるようになるまでに回復するには時間を要します。
そのような状況の妻に家事や育児を担当させるのは体の回復を遅らせ,時には疾患につながることも考えられます。
そもそも,出産の痛みで悶え苦しんでいる姿を目の当たりにすると,出産後に夫が育児や家事を担当しないのは,まさに不公平な状況かと思います。
一方で,仕事で忙しいと育児や家事を十分に行うことはできません。そのため,夫も育休を取得して,育児や家事を行う必要があります。

(2)育児に追われると家事ができない

育児をしていると,夜中に何度も起きたり,授乳して「寝た」と思って布団に寝かせても,急に泣き出すなどということはしょっちゅうあり,結局四六時中赤ちゃんを抱いたりすることになります。
そんな状況なため,妻が家事を行うのは難しくなり,妻が担当する家事が溜まっていくだけでなく,夫婦ゲンカの元になったり,妻が精神的に追い込まれていく要因にもなります。
これを解決するには,夫が担当する家事を増やすか,夫も育児(授乳やオムツ替えだけでなく,病気やちょっとした体の異常への対応や調べ物なども)を行う必要があります。
育休があれば,こういった対応も十分に可能になります。

(3)気軽に相談したい

出産後に,子どもの体調の変化などについて不安に思うことがあっても,仕事で忙しいなどで気軽に夫に相談できないと,妻の不安が大きくなっていて精神的に追い込まれていってしまうことがあります。
育休を取得することで,相談しやすい環境を整え,問題の発生を未然に防ぐことができます。
また,夫も,育休を取得していると相談を受けるだけでなく,普段から妻の様子を見ることができるので,体調の変化や精神状況などにも気づきやすく,いきなり体調不良になったり,精神的に追い込まれてしまう前に対応できるということもあります。

(4)子どものことがよく分かる

そして,育休を取得することで,子どもの普段の様子がよく分かり,子どもの好みや癖などを知ることができるので,充実した育児にもつながります。

(5)まとめ

夫も育児休暇を取得することで,育児や家事をこなせ,妻の産後の回復に役立ったり,妻の精神的な安定につながったり,ひいては子どものためにもなります。何より,産後の夫の非協力が妻が離婚を考える理由になるケース(出産直後の離婚だけでなく,数十年後に問題になる場合も)があり,とても重要なことかと思います。

2 育児休暇制度について

それでは,夫の育児休暇制度について解説したいところですが,これだけでものすごく長くなってしまうので,またの機会とさせていただきます。

3 少しでも育児や家事に回せる時間を

育児休暇について法律で認められ,育休取得について不利益を与えることは禁止され,「イクメン」などの言葉が広まったといっても,「育児休暇を取るのは気が引ける」「そんな育児休暇を認めていたら会社が回らない」という意見があるかと思います。企業側(同僚も含む)の理解や後押しがないと,育児休暇を実際に取得するのはなかなか難しいのが現状かと思います。そこで,少しでも夫が育児や家事ができるように,企業側ができる工夫をお話したいと思います。

(1)休暇を増やす・勤務時間の短縮

まず,完全な育児休暇となるとなかなか難しいのであれば,一月や二月などに限定して勤務を週4日や3日にするといった方法も考えられます。これであれば,勤務を続けたままですので,人員不足の問題も抑えられます。
また,一定期間だけ勤務時間を10時から16時などの時短勤務にして,朝と夕方に育児や家事をする時間を設ける方法もあります。なお,この時短勤務については,法律でも規定されています。
さらに,この二つを組み合わせて,1ヶ月は勤務日を3日にして,2ヶ月目からは時短勤務にするということも考えられます。
完全な育児休暇の導入は難しいとしても,勤務日数や時間を短くして,育児や家事に回せる時間を認めることであれば実現しやすいかと思います。

(2)自宅勤務

他にも,自宅勤務を導入する方法があります。
この場合も,全ての勤務を自宅勤務にするだけでなく,週の1日を自宅勤務にする方法もあります。
ただ,現場での仕事などでは自宅勤務はできませんし,また,情報漏洩の問題を含めセキュリティ対策の面からは,慎重な対応が必要となります。
参考までに,僕が行っているのは,週2回を自宅勤務にして,妻が料理などの家事をしている間に子どもを抱っこしたりあやしたりしています。
これだけでも,妻が落ち着いて料理ができたり,家事をすることができます。また,妻の体調が優れない時には,妻が休む時間を確保できます。緊急の対応が必要な案件があると,どうしても自宅勤務が難しいこともあるので,常にとはいきません。
ちなみに,自宅勤務でないときも,僕の担当(共同のも含む)は,オムツ替え,食器洗い,オムツや子どもの服の洗濯,お風呂入れです。

4 スムーズな家事や育児

育児や家事に使える時間を増やすことも重要ですが,育児や家事を効率よく行うことも家事や育児の負担を減らすためには重要かと思います。

(1)役割をよく話し合う

効率よく家事や育児を行うには,まず,出産の前から役割分担について夫婦や同居の家族と話し合うことが重要です。
行き当たりバッタリでは,何をしていいのか分からず右往左往し,時にケンカとなって無駄に時間を使ってしまいます。
また,妻の側も,しっかりと要望を伝えないと夫は気づきません。家事をやる夫にしろ,家事をやらない夫にしろ,妻が感じる妊娠や出産に伴って生じる変化について,夫には分からないことがたくさんあったります。言わなくても分かってくれるは「厳禁」です。
妊娠前から,出産前から,妊娠・出産で動けなくなる可能性や精神的な変化(落ち込む,怒りやすくなる,子ども中心になる)可能性などを説明し,「こうして欲しい」という要望を伝えて,役割分担をしておくと,夫も予測した上で行動できるので,スムーズにいきます。
もちろん,それぞれの家庭における環境,経済状況,性格などによって対応は千差万別ですが,役割について話し合うのは非常に重要なことです。

(2)効率的な作業動線の確保

次に,家事や育児について効率的な作業動線を確保することが重要です。
オムツを替えるといっても,オムツをいちいち探しに行ったり,おしりふきとオムツが別々の所にあっては,無駄に時間を使うだけです。
たとえば,オムツ替えを行う場所から近い定位置にオムツをストックし,おしりふきや(着替えが必要な場合に備えて)着替えを分類のうえ集約し,オムツ廃棄専用のゴミ箱を用意すると,すぐに作業が出来て,無駄もありません。
どのような方法が効率的かは,間取りや育児の方法(母乳かミルクか,布オムツか紙おむつかなど)でも変わってきます。
ちなみに,僕の所は,母乳と布オムツなので,毎日布オムツを洗濯する必要があります。それなりに手間がかかるので,作業動線を確保するように工夫しています。たとえば,洗濯機の近くに洗浄と浸け置き用のバケツを並べています。こうすると,布オムツを簡単に洗浄した流れで浸け置きができ,また,浸け置きした布オムツをすぐに洗濯機に入れられます。他にも,物干しにパラソル型のものを使うことで,布オムツを引っかけるだけで干すことができ,作業工数を少なくしたり,洗濯ネットなどであらかじめ分類(形成オムツとうんち用ネット,子供服,ガーゼなどに分類)しておくことで,効率的に作業ができます。

(3)無理をしない

もう一つ重要なのが,育児も家事も無理をしないということです。
想像以上に育児は重労働だったり,慣れない家事をする人だと上手くいかないことも多いと思います。
無理をして倒れてしまったり,上手くいかずに夫婦ゲンカになっては,夫婦にとっても子どもにとっても良くありません。
責任感が強い人ほど,どうしても頑張ってしまったりしがちですが,根気よく続けて行くには,無理をせず,楽をすることも大切です。

人の名付けにルールはあるの?

人の命名に関する法律

先日,日本の理化学研究所が113番元素の命名権を獲得したというニュースがありました。元素の命名権は国際純正・応用化学連合(IUPAC)という機関が国際的な命名法を定めており,そのルールに従ってIUPACから発見者に命名権が与えられるという仕組みになっているそうです。
では,私達にとって一番身近な,人の命名にはどのようなルールがあるのでしょうか。ちょっとだけ整理してみたいと思います。
人の命名について定めている法律は「戸籍法」です。ところが,戸籍法には,命名のルールについて「子の名には,常用平易な文字を用いなければならない。」(50条)という定めしかありません。つまり,「常用平易な文字」を使いさえすれば,あとは特にこうしなければならないというルールはないのです。

戸籍法

第五十条 

 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。

2 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。


ちなみに,「常用平易な文字」とは,戸籍法施行規則60条によると,常用漢字(2136字),戸籍法施行規則別表に掲げられた漢字,そして,平仮名または片仮名ということになっています。

戸籍法

第六十条

戸籍法第五十条第二項の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。

 常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
 別表第二に掲げる漢字
 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)

つまり,法律上使用可能な文字さえ使えば,原則としてどのような名前でもつけられるということになっているわけです。最近は「キラキラネーム」などと言われるように,工夫を凝らした名付けをする方々も増えているようですが,日本の法律では人の命名はかなり自由に認められているといえます。

なお,常用漢字表と別表第二に掲げられている漢字は以下のようなものです。

【常用漢字表】

http://kokugo.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf

【別表第二】

http://www.moj.go.jp/content/001131003.pdf

命名権の濫用

そこで思い出されるのが,90年代に話題となった「悪魔ちゃん」ですが,この名前も戸籍法上は常用漢字ですので違法にはなりません。では何故この名前が認められなかったかというと,裁判所により「命名権の濫用(らんよう)」という理論が適用されたことによります。もっとも,人の命名について「命名権」というものを定めている法律はなく,誰に命名権があると考えるべきかについても諸説ありますが,「子の福祉」という観点から,あまりにも子の福祉を害する名前を付けることは「命名権の濫用」とされ,認められないことがあるのです。
とはいっても,これは極端なケースで,通常の名付けにおいて「命名権の濫用」になるということはなかなかありませんが,裁判例からすると,これだけは守るべきルールとして,「子どものためを思って名付けをする」ということは求められていると言えそうです(当たり前のことなのですが)。

弁護士 金井英人

2015年4月スタート 子ども子育て支援新制度

2015年4月から,子ども子育て支援新制度が実施されます。そこで,この制度について,簡単にご紹介したいと思います。

新制度の類型

新制度では,保育事業について次の2つの類型を定めています。

1.施設型
①保育所,②幼稚園,③認定こども園(これには4類型あります)

2.地域型保育
①家庭的保育,②小規模保育,③事業所内保育,④居宅訪問保育

※幼稚園,認可外保育施設は,新制度に入るものもあれば,現行制度のまま存続する園もあります。

保育の格差が生じる可能性

上記のように,新制度は保育について多様な類型を作っていますが,これは,結果的に多様な基準・条件の設定を許すことにつながっていることに注意が必要です。

地域型保育給付の各事業は,ビルの一室などを活用した簡易な保育の場を想定しており,保育士資格の緩和など保育所よりも緩い基準の設定がされています。施設や事業によって基準が違うということは,入所した施設によって受ける保育に格差が生じる可能性があるということです。

各施設・事業の基準は,全ての子どもに等しく安全・安心の保育を保障するためにも,現行の幼稚園及び保育所の認可基準と同じ水準のものが求められるところです。

市町村の責任

新制度導入にあたり,児童福祉法も改正されました。改正児童福祉法24条1項では,保育を必要とする保護者が保育所を希望すれば,それに応じなければならない義務が市町村に課せられています。

しかし,同条2項では,保育所以外の認定こども園や地域型保育給付の事業では,市町村は直接的な責任を負いません。子どもが保育を受けられるかどうかは,契約の当事者である事業者と利用者との契約(直接契約)によって決まります。

そのため,親の収入,子どもの状況によっては,契約が出来ずまた解除され,保育を受けられない子どもが出てきてしまう可能性もあります,

第24条
1 市町村は、この法律及び子ども・子育て支援法の定めるところにより、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、次項に定めるところによるほか、当該児童を保育所(認定こども園法第三条第一項の認定を受けたもの及び同条第九項の規定による公示がされたものを除く。)において保育しなければならない
2 市町村は、前項に規定する児童に対し、認定こども園法第二条第六項に規定する認定こども園(子ども・子育て支援法第二十七条第一項の確認を受けたものに限る。)又は家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業をいう。以下同じ。)により必要な保育を確保するための措置を講じなければならない。

今後について

多くの自治体で,この9月に新制度に関連する条例が制定されました。待機児童の解消などを目的に子ども子育て支援新制度が作られましたが,一方で,ご紹介したような問題点もあります。保育を必要としているすべての子どもに平等に保育を保障するためにも,必要な改善を求めていくことが重要です。

弁護士 亀井千恵子

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