憲法
憲法ってないと困る?のりちゃんのノリノリ憲法
のりちゃん…世界平和を願いながら日々法律を勉強しているけど、解らないことだらけ。 MEGANE…某弁護士。
最近、憲法を改正するのに賛成か反対かとかって話題があるけどそもそも憲法って何?
法律とどう違うの?
そもそも法律ってどうやって決まると思う?
国会で、多数決で決めるのかな?
そうだね。じゃあ、法律で決めればどんな内容でもOKかな?
例えば、国会で政府を批判するデモや集会を企画したり、参加したら懲役刑になるとか、ツイッターで「安保法制反対」と投稿したり、「いいね!」しただけで懲役刑とか、それでもOK?
いくら法律でも、それはダメだと思うなあ。だって、それじゃ政府に都合良すぎるでしょ。
ほう。でも法律で、こういうことは決めても良いとか、今言ったような「それはいかんでしょ。」という基準って、あるのかな?
わからないけど、でも、あんまり無茶な法律決められても困るし、いくらなんでも、そんな法律決めたりしないんじゃない? それに、もしもそんな法律決めたら国民が黙ってないと思うよ。
うん。確かに、今のところ、日本では、そこまで極端な法律は作られてないね。
でもね。国際ニュースみたことあるかな。
例えば「香港独立」というデモに参加したり、バイクに「独立」の旗を掲げて走っただけで、懲役刑を受けることがあるって、最近のニュースで見たことない? アグネス・チョウさんっていう、デモを指導した女性が逮捕されたり、独立を主張する新聞社が資産凍結されて解散に追い込まれたり。
見たことある。ヒドいよね。
無茶苦茶だと思う。
そうだね。でも今の香港の例では、裁判所や行政が勝手にやっているんじゃなくて、処罰の根拠は、国家保安維持法(「国安法」)というれっきとした法律に基づいてるんだよ。
香港・国家保安維持法は犯罪として、国家の分裂、政権の転覆、テロ活動、国家の安全を危険にさらすための外国勢力との結託の4種類を規定している。4種類すべてにおいて、最高で終身刑が科される。外国勢力との結託に関わる犯罪行為には、香港あるいは中国政府に対する香港市民の憎悪の扇動、選挙の操作または妨害、香港または中国に対する制裁措置などがある。
えーっ!?そうなの?
そんな法律ヒドいじゃない。
でも議会で決まった法律によって行われているんだよ。「悪法もまた法なり」っていう言葉があるけど、まさにそれだよね。
じゃあ、日本でもそういう法律ができたら同じ事が起こるってこと?
うん。危険性がないわけじゃないけど、少なくとも、日本国憲法では「表現の自由」という人権が保障されていて、この表現の自由の保障に違反する法律は無効になるとされているんだ。
日本国憲法第21条 ①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 ②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
それすごく良い。大切。じゃ、憲法なかったら大変じゃん!
え? まさか、香港にはそういう憲法はないの?
それが、ないんだよね。だから、多数で決めさえすれば、どんなに人権が踏みにじられるような法律でも、できてしまうんだ。それが今中国の圧力の下、香港で起きていることだ。
香港の人、かわいそう!!
いやいや、他人事じゃないんだよ。日本でも、1945年までは香港と同じかそれ以上に酷かったんだ。日本国憲法のような表現の自由を保障する憲法がなかった戦前には、香港の法律とそっくりな「治安維持法」(最高刑は死刑)という法律があって、「天皇制反対」と公然と主張すると死刑判決を受けるようになっていたし、「戦争反対」と書かれたビラをまいたりしたら、治安維持法で逮捕投獄されていたんだ。拷問で亡くなったり、獄中で劣悪な待遇の中で治療も受けられず病死した人もたくさんいたんだ。
そんな…。
ビラをまいただけで? 怖い…。
だから国民には正しい情報が伝わらなくなって、多くの国民には、軍部の言うとおりの発表を鵜呑みにした「勝利の連続」みたいな報道しか知らされなかったんだ。結局、本土爆撃や原爆が投下され、国土の多くが焼け野原になるまで、実際に戦争がどうなっているかも分からなかったんだよね。
そうだったんだ。それじゃあ、昔の日本も今の香港と同じだったんだね。でも今の日本には、憲法があるから、治安維持法のような法律を作ることは許されないよね?
そのとおり。二度と戦前のような権力の暴走が起きないようにという反省を踏まえて、今の憲法では、思想良心の自由(19条)とか表現の自由(21条)などが決められたんだ。解釈として、表現の自由には、「報道の自由」とか「国民の知る権利」なども含むとされているんだよ。
それじゃ、日本だと安心だね。
いや、そうとも限らないんだ。実は、自民党が、この憲法21条の表現の自由を変えようとしているんだ。
そうなの? どんなふうに変えようとしているの?
〈1項〉の次に、新しく〈2項〉として、次の文章を加えようとしているんだ。
「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」
それで何か
変わることになるの?
どんな活動が、「公益とか秩序を害することを目的とした活動」に当たると思う?
うーん…。そういえば、曖昧でよくわからない。
香港の例だと「独立を目指す運動」も「中国と一体となるという秩序を害する」として国安法で禁圧されているので、日本でも同じようなことが起こりかねないんじゃないかな。公益とか秩序というのは政府の側が判断することになるから、たとえば、「安保条約反対」とか「国葬反対」とかのスローガンを掲げてデモをすることも、「日本の安全という公益」を害する、とか「功績のあった元首相を静かに送る秩序」を害する、と言われかねないね。
そうなると、
どうなっちゃうの?
そうすると「安保条約反対」とか「辺野古の基地建設反対」という集会やデモを、罰則で禁止する法律も「公益を守るために憲法上許される」ことになってしまうかもしれない。法律を縛る「ひも」が緩くなることは、国民の人権が危うくなるということになるんだ。
それはすごくヤバいね。「改憲問題」って難しそうだからなんとなく避けてきたけど、ちゃんと考えないと大変なことになりそう。
そもそも「憲法」ってとっつきにくかったけど、少しずつ、何が問題か分かってきたような気がする。「法律より憲法が上」というのは、憲法が法律を縛ることで、時の権力者から国民の人権を守っているということだよね。
そういうこと! なかなか難しいけどね。憲法には他にも、大切な条文がたくさんあるから一つずつ考えてみると面白いと思う。でも、たくさんあっても基本は一つ。憲法の原則に反する法律はダメってことなんだ。次号では、戦争放棄を掲げる憲法9条について考えてみようか。
最近、ウクライナの問題とかミサイル問題とか怖いニュース多いから、日本は大丈夫なのかなって思ってたんだ。是非やりたい!