刑事・少年事件

盲導犬は「物」扱いなの??

最近,盲導犬にケガをさせた事件が問題になっていますね。その中で,「なんで,生きてる盲導犬が物なんですか」「盲導犬にケガをさせたのが器物損壊なのはおかしい」という意見が出ています。今回は,この問題についてお話しさせていただきます。

盲導犬は,法律では「物」としてしか保護されない??

まず,盲導犬は「物」としてしか保護されないのかについてですが,盲導犬は,ちゃんと動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)で「愛護動物」として保護されています。
そして,正当な理由もなく,盲導犬にケガを負わせれば動物愛護法44条1項違反で2年以下の懲役か200万円以下の罰金が課される可能性があります。

動物愛護法
第44条
1 愛護動物みだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
4 前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

なんで器物損壊罪なの??

ちゃんと動物愛護法があるのに,今回は器物損壊罪で警察が捜査をしていると報道されています。何か不思議に思いますよね。実は,警察が器物損壊罪で捜査をするのも,あながち間違いではないという現実があります。どういうことなのか器物損壊罪(刑法261条)を読んでみましょう。

刑法
(器物損壊等)
第261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

懲役の期間を比べてみると,器物損壊罪の方が動物愛護法44条1項違反より1年長いのです。罰金では,動物愛護法44条1項違反の方が重いのですが,刑罰については,懲役の方が罰金より常に重いとされます(刑法9条,10条)ので,器物損壊罪の方が重いことになります。

そのため,器物損壊罪で捜査することは,悪質な行為に対して厳しく対応するという意味では間違っていないことになります。

ちなみに,盲導犬などの動物が器物損壊罪の対象になるのは,器物損壊罪に「傷害した」と動物を前提にした文言があるからです。

命より財産の方が保護される現実

ただ,こうやって見てくると,何か腑に落ちない点が出てくると思います。「愛護動物」という命より「他人の物」という財産として評価された方が法的により手厚く保護されるという問題です。

それこそ,愛犬や愛猫を「ペット」ではなく「家族」として,また,盲導犬などについては生活を支えてくれる大切な「パートナー」として一緒に暮らしている方も多いと思いますが,そんな思いと違って,現状の法律では,「愛護動物」について命としての評価より財産としての評価の方が法的により手厚く保護されることになります。

動物愛護法は意味がない?

そうすると,動物愛護法は意味がない法律なのでしょうか。たしかに,器物損壊罪より懲役の期間が短いという問題がありますが,動物愛護法にも重要な意味があります。

それは,器物損壊罪ではカバーできない,飼い主や繁殖業者など所有者による行為や自然環境で生活している動物に対応できることです。

器物損壊罪は,原則として「他人の物」つまり他人が所有している動物にケガを負わせたり,殺してしまった場合に適用されます。自分の所有している物を壊しても原則として器物損壊罪には問われないため,飼い主や繁殖業者などの所有者が飼っている動物にケガをさせたり,殺したりする場合については対応できないのです。

一方で,動物愛護法は,「他人の」かどうかにかかわらず適用されますので,より広い範囲で「愛護動物」を保護することができ,そこに大きな意味があります。

また,動物愛護法には,動物の管理に関する規定などもあります。これについては,また,違う機会にお話しさせていただければと思います。

最後に

今回の事件をきっかけに,動物愛護法の罰則規定について,懲役の期間を長くする改正が議論されるかもしれません。ただ,必ずしも動物が大好きという方ばかりではなく,動物が苦手という方の意見を聞く必要もあります。

ムク (572)また,事情は様々ですが飼育放棄による殺処分問題など,動物を巡っては今回の件以外にも多くの問題があります。そういった問題が一つ一つ解決して,人間も動物もこんな笑顔でいられる社会が実現できたらと思います。

弁護士 倉知孝匡

 

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