知的財産

ロボットに権利は認められるの?

弁護士 倉知孝匡

今回は、最近話題のAI(人工知能)や「ロボット」に権利が認められるかどうかについてお話しさせていただきます。
弁護士や裁判官がAIに取って代わられるのかというのも話題になっていますが、今回のお話は、AIやロボットが原告や被告として法廷に立つなんてことがあるのか、そもそもその前提となる権利が認められるのかという問題についてです。ただ、この話は議論が成熟している分野でもないので、一つの考え方として読んでいただければと思います。

 

1 AIと「ロボット」

まずは、お話をする前に、AIやロボットとは何かを説明しておきます。
AIと「ロボット」をどう定義するのかは考え方が色々ありますが、今回は、AIについては、人間の脳の部分をコンピューターで実現しようとするもので、自己学習する能力があるものと考えてください。
それで、「ロボット」については、AIを搭載した「機械」という程度に考えてください。

 

2 「ロボット」に権利はあるのか

鉄腕アトムやドラえもんなど、人間と同じように感情があって、豊かな表現ができ、ちゃんとコミュニケーションが取れる「ロボット」が登場するアニメや映画はたくさんあります。
では、この「ロボット」に人権のような権利が認められるているのでしょうか?もう少し法律家っぽく言うと、「ロボット」に権利を持つ資格があるのかという問題です。
さて、皆さんどう思いますか?人間みたいな鉄腕アトムや猫型(?)とはいえ人のようなドラえもんにはそんな資格がありそうな気もしますよね。
けれども、今の日本の法体系では、鉄腕アトムやドラえもんであっても、権利を持つ資格はありません。
理由は簡単です。「人権」という言葉に表れているように、今の日本の法体系では、権利については「人間」だけを想定しているからです。
動物の虐待に関してブログを書いたときに動物愛護法を取り上げましたが、そこでも犬や猫などの動物に権利を認めているわけではありません。
同じ生き物として「家族」とまで言われる犬や猫でもダメだとすると、あくまで機械である「ロボット」やプログラムであるAIに権利を持つ資格を認めることはできないということになります。

 

3 権利を認めるために乗り越えないといけないこと

では、現状の法体系ではAIやロボットに権利を認めていないのであればこれを変えてしまうことはできるのでしょうか。それこそ、憲法を改正してロボットの権利を認めさせたり、また、「憲法はロボットの権利を認めることは禁止していない」と考えて、法律でロボットの権利を認めるということはどうでしょうか。
しかし、これについては、乗り越えないといけない問題が技術面と法律面でいくつもあります。

(1)権利の発生の場面

仮に、ロボットに権利を認めるとしても、売買契約など意思の合致が要求されるものについて、人間と同じような「意思」の合致ということがロボットにあるのかという問題です。
これは、ロボットに人間のような感情や意思決定があるのかどうか、さらにつきつめて考えると、人間の「意思」とは何かという非常に難解な問題に行き着きます。
しかも、現在のAIのレベルの場合と、本当に人間と遜色ない自律したAIができた場合とでは、当然に「意思」があるのかについての判断も変わってきますし、そんな高度なAIに至るまでに複数の段階があるため、それぞれのAIの段階に応じた「意思」についての線引きも難しいです。
さらに、交通事故やセクハラなどの損害賠償請求で、慰謝料を請求することがありますが、ロボットにもこれらが認められるのかどうかについては、人間の「感情」や「精神」などとの関係で問題になってきます。

(2)権利の処分や行使

(1)とも関連しますが、ロボットに権利を認めるとしても、その権利を処分する、たとえば、土地の所有権を有していたら、その売買や賃貸をすることについて、人間の命令ではなく自分の「意思」で判断できるのかということも問題になります。
また、権利が認められても、これを行使することができないと意味がないので、人間の命令ではなく自分の「意思」で、裁判を提起するなど権利を行使することができるのかという問題も考えられます。

(3)相続などにおける「死亡」

権利を認めるとして、たとえばロボットが壊れてしまった場合、権利を相続するなどということが起こるのかという問題もあります。
「血のつながりがある子どももいないのに、相続なんて認めようがない」という考えがあるかかと思いますが、人間でも、血のつながりなくても「養子」として相続が認められますし、血のつながりがない配偶者にも相続が認められていますので、相続と「血のつながり」や「子ども」は必ずしも関係がありません。
それよりも、相続における「死亡」が、「ロボット」にも認められるのかということが最大の問題になると思います。
体も同じ物が作れ、人間の脳に当たるAIもデータとして復元可能だとした場合、どんなに壊されても「死」が訪れないということも考えられます。
また、これは「殺人罪」のような「死」を前提とした刑事罰などにも影響する話です。

(4)ロボットを人間のコントロールが必要なものとみるか

ロボットによる意思表示にも影響しますが、根本的な問題として、ロボットについて「人間」がコントロールすべきものという考えをとるかということがあります。
映画ターミネーターなど、ロボットが「人間」を支配する世界を描く作品は多数あり、現時点でもAIの暴走を止める仕組みが必要との意見も出ていたりします。
そのため、仮に、「人間」と同じように、それ以上にロボットが自立して思考することができるようになったとしても、最後は「人間」がコントロールできる仕組み(緊急停止プログラムなど)を入れるべきかどうかという問題が考えられます。
一人前の存在として権利の主体と認めながら、結局は「人間」の「道具」としか見ないのかという根本的な問題が考えられます。

(5)まとめ

今書いたことだけで全てとは思いませんが、ロボットに権利を認めるというためには、技術面と法律面の点で乗り越えないといけない問題が多くあります。

 

4 実は既に問題になり始めている

ただ、そんなロボットの権利なんというものは、だいぶ未来の話と思っている方が多いでしょうが、実は既に、AIに権利を認めるのかどうかについて既に問題になり始めています。
それは、AI(人工知能)が作成した小説やイラストの著作権をどう考えるのかに関連してです。この点については、またの機会にお話しさせていただきます。

「自炊代行」事件控訴審判決

10月22日,「自炊代行」を行っていた業者に対する著作権侵害を理由とした差し止め,損害賠償を求めていた事件の控訴審判決があったことが報道されています。

結論としては,権利者側の請求を一部認めた地裁の判断を維持する形になっています。

この事件の判決文が裁判所のサイトにアップされましたので,解説をしていきたいと思うのですが,この事件色々と前提知識がないと分かりにくいところ(「自炊」ってご飯を作ること??などなど)がありますので,何回かに分けて解説していきたいと思います。

弁護士 倉知孝匡

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