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子の監護者指定審判事件 ~幼子の本心を知るには~

弁護士 浦野 智文

「監護者」とは?

 皆様「親権」という言葉は聞いたことがあると思います。
 「親権」の内容は身上監護と財産管理に大別され、身上監護という権利を有し、義務を負う者のことを「監護者」と呼びます。

 身上監護は、子どもの成長と発達を援助し、育成する基本的な権利義務です。
 具体的には、子どもへの教育や居所の指定を行うことができる一方で、子どもの生活の世話をする義務を負うなど、非常に重要な権利義務です。

 

事案の概要

 本件は、夫婦X(妻)及びY(夫)の間に未成年の子ども2人(いずれも幼児)がおり、Xが未成年者らをYのもとに置いて別居した後、未成年者らを監護しているYに対し、未成年者らの監護者をXと定めること及び未成年者らの引渡しを求めてきた事案です。

 私はYの立場から、未成年者らの監護者をYと定めて、未成年者らの引渡しを求めるXの申立てを却下すべきである旨主張しました。審判の結果、こちらの主張が認められ、未成年者らの監護者はYとなりました。

 

子の監護者を定める際の考慮要素

子の監護者を定めるにあたっては、

1.各親が子どもと同居していた間の各々の監護状況
2.現在子どもと同居している親(同居親)が監護を開始した態様
3.各親が子どもを監護した期間(監護環境の継続性)
4.現在の子どもの監護状況
5.各親の今後の子どもの監護体制
6.現在の子どもの心情・意思
7.各親が仮に自分が監護者となった場合に、監護者とならなかった親と子どもとの面会交流について今後どの程度許容していくつもりであるか(面会交流の許容性)

などが考慮されます。

 また、家事審判では、判断結果が子どもに影響を与える手続の場合、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、子の意思を尊重しなければなりません(家事事件手続法65条参照)

 本ブログでは、上記の考慮要素のうち、子の意思の尊重という観点から、考慮要素6.について詳しく述べたいと思います。

 

現在の子どもの心情・意思をどうやって判断するのか

 子どもが自らの意思をはっきりと表示できる程度の年齢に達している場合であれば、現在の子どもの心情・意思を判断することは比較的容易です。

 では、本件のように子どもが幼児であり、自分の意思をはっきりと表示できない場合、現在の子どもの心情・意思はどうやって判断されるのでしょうか?

 これを判断する1つの方法として、試行的面会交流という手続があります。

 

試行的面会交流について

 試行的面会交流とは、家庭裁判所内にある部屋で、家庭裁判所調査官が各親と子どもが交流する場面を観察する手続です。

 家庭裁判所調査官とは、児童心理学等の試験や研修を受けた家庭問題の専門家であり、観察の結果を報告書にし、裁判官に対して提出します。この報告書は、裁判官が子の監護者を定める上で重要な資料となります。

 交流場面を観察する部屋は、子ども向けのおもちゃを多数置く等して、子どもがリラックスできる状態にしています。また、部屋の一角にはマジックミラーが設置され隣室から部屋の様子を観察できるほか、部屋に設置されたカメラにより隣室から映像や音声も視聴できます。

 私が試行的面会交流に立ち会ったところ、調査官は子どもの普段の様子を観察できるよう、様々な工夫をしていました。
 具体的には、まずは同居親と子どもを一定の時間部屋で遊ばせ、子どもが場の雰囲気に慣れた状態になったタイミングで別居親を入室させ、その後しばらくして同居親を自然に退室させていました。
 このような方法を取ることにより、できる限り子どもを普段の様子に近付けようとしているのです。そうした上で、子どもが各親に対して取る態度は、子どもの真の心情・意思が反映されたものといえます。

 なお、試行的面会交流を実施する前から、同居親が別居親と子どもの面会交流に協力的であった場合、試行的面会交流における子どもの別居親に対する態度は、同居親が面会交流に非協力的であった場合に比して、より一層子どもの真の心情・意思が反映されたものといえます。
 なぜなら、別居親としては、試行的面会交流において、子どもが自身に拒絶的な態度を取った場合、その理由として、同居親が従前の面会交流に非協力的であったことを主張してくることが考えられます。
 しかし、同居親が面会交流に協力的であった場合、別居親はそのような主張をすることが出来なくなるからです。

 

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