憲法
友の会第42回総会を振り返る 友の会総会 第2部 記念講演「戦争はウソから始まる」~戦争のリアルと政府のウソ~
講師 フリージャーナリスト 西谷 文和さん
7月27日、第42回友の会総会が行われました。その記念講演の内容を抜粋してお伝えします。
ウクライナとイスラエル
昨年10月に行われた現地取材に基づいたウクライナの状況をスライドの画像や映像を交えて報告して頂きました。ロシア兵によって倒されたテレビ塔等、リアルな戦地の状況を見ることができました。とりわけ、リヴィウの施設で、手足を失った兵士達が黙々とリハビリに励み、インタビューに対して「また戦場に戻りたい」と回答する様子に衝撃を受けました。西谷さんの「ここの兵士の多くは躁うつ病に罹っている。戦場に戻りたいと言っていた兵士は躁状態だと思う。鬱状態の兵士の中には働くことができなくなって酒浸りになり、家庭が崩壊してしまった人もいる」とのコメントに「戦争のリアル」を思い知らされました。
また、本年3月に行われた現地取材に基づいたイスラエルの状況もご報告頂きました。パレスチナ人の人質が収容されているオフェル刑務所の貴重な映像を見ることができました。また、西エルサレムの旧市街地においてモスクに巡礼するアラブの人達に対して銃を持ったイスラエルの兵士が厳しい監視の目を向ける様子が印象的でした。
さらに印象的だったのは、「アラブ人の命も大切」と掲げてデモを行うイスラエルの人々の様子でした。いわゆる無党派層において、徐々にネタニヤフ首相に退陣を求める声が広がっているとのことであり、このような声が戦争の終結に繋がっていくことを願わずにはいられませんでした。
故中村哲さんと憲法9条
ウクライナとガザの戦争を見ても、戦争を始めるのは簡単だけれども、終わらせるのは非常に困難だということが分かります。しかし、「戦争を終わらせた人」として、アフガニスタン等で医療活動や灌漑事業に尽力された医師の中村哲さんのお話を取材時の画像や映像を交えて紹介して頂きました。 中村さんは国民の生活が豊かになることが対立の気運を和らげること、ひいては、戦争を終わらせることに繋がるとの信念の下、アフガニスタンに用水路を作る活動を行いました。この用水路は、砂漠に緑を取り戻し、干ばつから多くのアフガニスタン人を救いました。そして、農業を営むことを可能にし、国民に豊かさをもたらしました。中村さんは「カカムラ(中村のおじさん)」として、今でも現地の多くの人から慕われているとのことです。中村さんは、日本に憲法9条があることによって各国の人々の憎悪の対象にならなかったことが、危険なアフガニスタンにおいて自分を守ってくれたとも話していたとのことでした。西谷さんは、今後の日本について、「アメリカについていくか、それとも、中村さんから学んでいくか」の選択を迫られていると話します。 憲法9条を持つ日本は、中村さんが自らの生き方を以て示してくれた、「貧困を解決することが戦争の解決に繋がる」という教訓を活かし、非軍事的な方法で世界の紛争の解決に貢献できるのではないかと思いました。
戦争はウソから始まる
西谷さんは、イラクのクウェート侵攻による惨状を訴えた「ナイラ」という少女が、湾岸戦争開始の世論に影響を与えたこと、しかし、実は、この「ナイラ」は自国に行ったことが一度もなかったという衝撃の事実を例に、「戦争はウソから始まる」と訴えました。日本においても、関東大震災時に「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」というウソを広げることに陸軍が一役買っていたことや、安倍元首相が国会において108回もの虚偽を述べたという実例を示して、「ウソ」を見抜くことの大切さを伝えてくれました。
「Cの方法」という考え方
さらに、西谷さんは、戦争を防ぐために大切なこととして、「Aの方法かBの方法か」という選択を迫られたときに、「Cの方法もあるはず」と考えることを挙げます。たとえば、「消費税増税か、社会保障削減か」と迫られたときに、「大企業や大富豪に対する増税という方法もある」と考えるというようなことです。戦争に関していえば、たとえば、「アメリカに加担するか、テロリストに加担するか」と迫られたときに、「話し合いを促す」という選択肢について考えるというようなことがとても重要だということです。
大阪万博とカジノ
最後に、大阪万博について、ドバイ万博の前例を見ても採算が合わないのは明らかであり、それでも強行するのは、跡地においてカジノを建設するためであること、カジノに併設する劇場の経営権を狙う吉本興業とタッグを組んで万博を進めようとしていること、そもそも、この万博は、維新の会の代表であった橋下徹氏、同党の松井一郎氏、故安倍晋三元首相、菅義偉官房長官(当時)の「飲み会」において「思いつき」によって始められたものであること等、大変興味深い話をして頂きました。
この万博の話からも、表面的な報道に惑わされずに、その裏にある「真実」に目を向けることが大切であると感じました。
……感想……
何度も危険な地域に足を運び、丁寧な取材をされてきた西谷さんの話にはとても説得力がありました。また、スライドを駆使し、ユーモアも交えながらのお話は大変聴きやすかったです。最後に披露して頂いた替え歌等、エンターテインメント性も抜群でした。楽しみながら大切なことを学べる、非常に充実した2時間でした。
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