リストラ・倒産が相次いでいる今、なんと『解雇は原則として自由にできる』という驚くべき内容の労働基準法改正案が,この通常国会に上程される予定であることを皆さん、ご存知ですか?
改正案には、「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができる。ただし、その解雇が客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされ、最高裁判例のいわゆる解雇権濫用法理をそのまま規定しただけとしています。
最高裁判例の趣旨ねじまげ
しかし、そもそも最高裁判例は、最高裁自身が解説しているように、解雇の原則自由を認めた上で、例外として濫用にわたる場合に解雇を無効とするものでは決してありません。あくまで解雇する側が解雇する正当な理由を証明する責任を負うのであり、それができなければ解雇は認められないというのが裁判実務です。
改正案どおりになれば、このような実務の取扱いが逆転し、労働者が立証責任を負わされる危険が大きくなります。
確かに、解雇を規制するルールが法律に規定されていない日本は世界的にみても遅れています。しかし、最高裁判例をもとにした現在の裁判実務を立法化するというのであれば、「使用者は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であると認められる場合でない限り、その雇用する労働者を解雇することはできない」と明確に規定すればいいはずです。
金銭解決規定は削除
復活あきらめない政府・経営側
労働者「解雇が無効だから職場復帰させて下さい」
裁判官「でも、使用者が解決金を払うと言っているから、それは無理です」
こんな会話、実はこれから横行しそうだったのです。
当初案では、解雇が無効でも、使用者の申立てにより金銭賠償で解雇できるという規定が盛り込まれていました。さすがに労働団体や労働側弁護士等から強い批判を浴びて,今回は削除されましたが、政府や経営側はあきらめていませんし、ここに今回の改正案の本音があらわれています。
若年定年制の導入もめざす
その他、今回の改正案には、有期雇用期間をこれまでの原則1年から3年に延長する規定があります。これでは,たとえば新卒学生が試用期間を3年に延長されるのと同じで、しかもその後、正社員となる保証はありません。特に女性の場合、出産等で25歳を過ぎたら契約を終了できる、事実上の若年定年制の役目を果たす危険が大きいのです。このように雇用をますます不安定にすることになります。
連合、全労連こぞって反対
さらに、職業安定法、労働者派遣法、雇用保険法の改正案が一挙に国会に提出される予定です。連合も全労連も労働団体こぞって今回の労基法改正には反対の立場です。
これ以上の労働者切り捨てには断固反対し、これを契機に労働者保護の流れを力をあわせて作っていきましょう!
(2003年3月25日 海道宏実)