| 解雇は不当労働行為 中京セキュリティ高齢者解雇事件 |
| 弁護士 兼松洋子 | |
一、事件の概要 中京セキュリティ株式会社は中京銀行の100パーセント出資子会社で、社長をはじめほとんどの役員が中京銀行出身者であり、業務内容は中京銀行の機械整備、本社の警備、メールの配達などです。 この会社が、職業安定所の求人票で「定年は60歳、再雇用有り」と言って社員を募集し、原告らは他企業を定年退職した後、職業安定所の紹介で入社しました。原告らは面接の際、社長から「健康で本人が希望されるなら65歳まで嘱託として勤めていただきます」との説明を受けました。 嘱託規定にも、「嘱託は1年ごとに更新し最長は65歳まで」と定められています。原告らは会社の説明を信用して、65歳までの生活設計を立てて入社し働いていました。 ところが中京銀行はリストラの中で突如、「次回からの嘱託契約の更新はしない」とし、中京セキュリティの業務を外部に委託する方針であるとして中京セキュリティの警備業務全体をセコムなどの外部の警備会社に委託する計画を急テンポで進め出しました。 そして60歳以上の労働者の首切りを強行してきたのです。 そこで、原告らは、解雇は無効であるとして労働契約上の地位の確認と賃金の支払いを求めて本年1月19日名古屋地方裁判所に提訴しました。 二、本件解雇の違法性 中京セキュリティ株式会社は職業安定所を通じて高齢者を中心に雇用することにより「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき、高齢者の雇用などに関する国や県からの助成金を受領してきており、前述のように入社時に65歳までの雇用の継続の約束をしていることからすれば、本件解雇は公序良俗に反するものです。 また本件の背景として、銀行産業労働組合に加入して労働条件の改善に取り組んだ労働者を嫌悪して差別的に解雇しようとしていたところ、昨年8月の中京銀行現金輸送車襲撃事件をきっかけに親会社である中京銀行が中京セキュリティの業務をセコムや日通に委託し、中京セキュリティの業務自体を縮小し従業員に対する更新拒絶を正当化しようとしてきたとの側面があります。 しかし、この現金輸送車襲撃事件は中京セキュリティが警備を担当していたものではなく何ら従業員に対する更新拒絶の理由とはならないものであり、会社の組合嫌悪の態度の現れと考える以外にありません。とすれば、本件解雇は不当労働行為にあたり、公序良俗に反して無効であると考えられます。 三、雇用の保障 雇用保障は労働者によって生活の安定・維持、労働者の権利を行使していく上での最も基本的前提的な事項です。そのことは高齢者にとっても当然のことです。 入社時の約束に基づいて生活設計を行っている高齢者に対し、入社時の約束を無視し、使い捨てるがごとき会社の態度は極めて悪質です。 四、労働法制改悪を許さない 現在、労働法制の改悪の動きが本格化し、国会で審議されようとしています。 今回の労働法制の改悪が行われてしまうと、財界のねらいどおり、労働省はまさに「使い捨て」ということが、大手を振ってまかり通ることになってしまいます。 今でさえ、この事件にみられるように働く者の権利を守るルールが無視されている現状であるにもかかわらず、逆に使い捨てを合法化していくがごとき労働法制の改悪は何としても阻止していかねばならないと、痛切に感じます。 |