ベタニア和解

 本年3月、あるキリスト教系幼稚園で突然全9名の教職員のうち6名が解雇されるという事態が起きました。誠実に職務を遂行し、正当な組合活動をしてきた6名に対し、幼稚園側が組合活動等を嫌って全く合理的理由のない解雇を敢行したのです。当事務所の海道宏実弁護士を通じてすぐに交渉を試みましたが幼稚園側は応じず強硬な姿勢をとっていました。そこで、6名は労働者としての地位保全及び賃金の支払を求める仮処分の申立に踏み切りました。この時点で海道弁護士に加え私も弁護団として加わらせていただきました。そして仮処分において主張及び疎明を尽くすとともに直接裁判官に心情も訴え、さらに、管理職ユニオンとともに、名誉回復及び学校法人の行為の不当性を広く訴えるための行動も行いました。
 当事者である事務職員の堰城さん、幼稚園教諭の高木、伊藤、立松、吉田、宮澤さんの全員が、全力でがんばり通して、6月30日和解による解決を迎えました。
 全面的に幼稚園側に非があることが明確に示された画期的な和解内容を勝ち取ることができたものの、職場復帰を果たすことはできず、辛い選択も迫られました。
 今回、当事者のお一人である伊藤さんが、私たちの依頼に応えて手記を寄せて下さいましたので、以下ご紹介致します。

 私は日進市内にあるキリスト教系の幼稚園で働いていて、今年3月22日に突然の解雇通知を受け取りました。
 4月から始まる新学期に向けて希望を持っていた私にとって、あまりにも突然の解雇ということ、9名いた職員のうち半分以上の6名が解雇されたこと、それに加え、解雇の理由は教会行事である日曜礼拝(本来幼稚園に勤務する私たちの仕事ではないことは当然です。)に参加していたかいなかったかという理由が占めているということに納得出来ず、裁判を起こしました。    
 私は、幼稚園教諭になることを夢見て、その為の学校に進み、勉強をして夢の実現に至りました。子供と日々関わる生活は毎日楽しく、園の方針であったキリスト教保育を行なうことに対しても誇りを持っていて、子供が自らお祈りをする姿に感動さえしていました。ただ、そんな中、園長から受ける宗教的押し付け、また学校法人に雇われた教員であるにもかかわらず宗教法人の行事への参加を強要されることに対しては、非常に苦痛を感じていました。教育よりも子供よりも、宗教の方が大事と言い張る園長のやり方にはどうしても納得できない部分が多く、「子供の為にも楽しんで保育を出来る環境を作りたい」という想いで、労働組合を結成し、話し合いを持ってもらえるよう園長に対してお願いをしていました。
 しかし、組合結成後、園長からは以前に増す圧力をかけられ、また強要をされ、最終的には話し合いも持たれないまま解雇されました。
 裁判では、陳述書や自分達で集めた資料を提出して私たちの主張を展開し、学校法人と宗教法人との混同などについても述べましたが、相手側からは反論らしい反論はなく、また今まで園長が行なってきた行為に関して理論的に説明して欲しかったのですが、相手側から出る陳述書は、でたらめなことばかりでした。正直なところ、私は裁判をすれば正面からまともな論議が交わせると期待していたので、がっかりしました。
 しかし、相手側が、私たちが一番に望んでいた「解雇撤回」を認めたことに加えて、解雇の意思表示をしたことを「陳謝」し、また金銭的な面でも「解決金」ではなく「慰謝料」という名目で支払うということになったので、これから先、前に進む為にも、6月30日に和解をするに至りました。
 今回解雇され裁判を起こしたことで、もちろん辛いことは沢山ありましたが、良かったと思えることもありました。その一つには、今回担当して下さった海道先生と兼松先生と出会えたことがあります。弁護士とは雲の上の存在で私達とは交わる事のない人達…と言うイメージがあったのですが、今回裁判を進めていく中で、当たり前のことなのかもしれませんが、私達の意見を本当に良く聞き入れて進めてくださり、信頼し頼りにしていくことができました。
 和解という形で裁判は終わりましたが、憎しみや悔しさにとらわれず、これからの人生を大切に歩んで行きたいと思っています。