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弁護士が依頼者にお金を貸すことは許されるのか?

弁護士 酒井 寛

弁護士の仕事をしていると,今日の食事代にも事欠くくらい,経済的に困窮している依頼者と出会うことがあります。そのようなとき,思わず「急場を凌ぐくらいのお金であれば,貸してあげたい。」という気持ちに駆られることがあります。

1.弁護士が依頼者にお金を貸すことの問題点

このような「弁護士が依頼者に対してお金を貸す」という行為に問題はないのでしょうか?
まず,弁護士が依頼者から”お金を借りる”ことは,原則として禁じられています。
このことについては,多くの方が,「まあ,そうだろうな」と考えると思うのですが,”お金を貸す”ことについては,「依頼者も助かるのだから,何となく良いのではないか」と考える方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

この点については,日弁連(日本弁護士連合会)が制定する「弁護士職務基本規程」に以下のような規定があります。

日弁連 弁護士職務基本規程 第25条
 弁護士は,特別の事情がない限り,依頼者と金銭の貸借をし,又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し, 若しくは依頼者の債務について保証をしてはならない。

この規定にあるように,弁護士は,「依頼者と(の間の)金銭の貸借」,つまり,依頼者からお金を”借りる”だけではなく,依頼者に対してお金を”貸す”ことも禁じられています。
このような規程が設けられた趣旨(理由)は,弁護士が依頼者に対してお金を貸すと,

・ 弁護士が,過度に依頼者に「思い入れ」をすることによって,「依頼者の言葉に耳を傾けつつも,弁護士として独立性をもって仕事をする」ということができなくなる
  また,それとは逆に,
・ 依頼者との間に利害の対立が生じ,信頼関係を傷つける

ことによって,弁護士の職務そのものをゆがめることになり易いというものです。

したがって,弁護士は,原則として,依頼者からお金を借りることはもちろん,依頼者に対してお金を貸すことも許されないのです。
許されない行為は,単純にお金を貸すことだけではなく,依頼者にとって必要なお金を弁護士が立替えたり,依頼者が負っている借金について弁護士が保証人になったり,担保を提供することなども含まれます。

2.例外的に許される場合も

ただし,「特別の事情」がある場合には,例外的に,依頼者にお金を貸す(立替える)ことも許されると解する余地があります。

たとえば,

・ 今すぐに裁判を提起しなければ,依頼者の貸金が時効によって消滅してし
まうにもかかわらず,依頼者が,提訴に必要な収入印紙の購入代金も有していない場合に,収入印紙の購入代金を一時的に立替える
 ・ 依頼者が経済的に困窮していることから,弁護士報酬の支払時期を猶予する(この場合も金銭の立て替えの一種と考えられます。)

などの場合には,許されると解する余地があります。

3.弁護士はどのようにすべきなのか

では,冒頭で述べたような,依頼者が,今日の食事代にも事欠くくらい,経済的に困窮していた場合,弁護士としてはどのようにすべきなのでしょうか?
一つの答えとしては,生活保護を受給するようにアドバイスをし,場合によっては,生活保護の申請に同行するということが考えられます。
なお,生活保護の申請から受給までには,ある程度の時間を要する場合がありますが,そのようなときは,社会福祉協議会が実施する「臨時特例つなぎ資金貸付」という制度を利用することによって,一時的に生活に必要なお金を借りることができる可能性があります(ただし,この制度を利用するためには種々の要件を満たさなくてはならないため,詳しくは弁護士等の専門家や最寄りの市役所等にご相談ください。)。

 

良かれと思ってやった行為であっても,許されない場合もある。
弁護士の仕事は(世の中のありとあらゆる仕事がそうだとは思いますが),非常に奥が深いと改めて思います。

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