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終活における遺言書のススメ

弁護士 中川亜美

今年のお盆はいかが過ごされましたか。今年も,帰省ラッシュやUターンタッシュで大変だった方,遠くにいる息子や娘の帰省に合わせて,好物をたくさんこしらえた方など様々にお過ごしになったと思います。

親戚や家族が集まりやすいこの時期,お盆のついでに葬儀場やお墓など,ご自身の「終活」を考えた方もいるのではないでしょうか。そこで,今回は,「遺言書のススメ」と題して,身内の紛争を回避する方法を御提案いたします。

さて,身内の相続問題で頭を抱えているというお話を聞いたことはありませんか。亡くなられた方が財産を残してくださったけれども,遺言書がないために,身内が揉めているという状況は,よくあります。この揉め事は,騒動の当事者には結構ストレスになり,最悪の場合,元々仲の良い家族でも,信頼関係が崩壊し,絶交状態になることもあります。そうなってしまった場合,とても寂しいですよね。

自分の財産のために自分の家族が争うことのないようにするために,一番簡単なのは,「遺言書を書くこと」です。自分で自分が亡くなった後の財産を誰が取得するかを決めておくのです。そうすれば,自分が亡くなった後に,どのように遺産を分けるかについての問題を少しでも回避できます。

ちなみに,自分に推定相続人がいない場合に,お世話になった人や親しい人に財産をあげたいなと思う場合にも遺言書は役に立ちます。

 

遺言書の書き方

1 遺言書の種類

遺言書の書き方は,法律上決まっており,法律に定められた方式によらなければ無効となってしまいます。

法律上認められている普通の方式の遺言書は,自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つです(民法967条)。

① 自筆証書遺言は,読んで字のごとく,遺言者が遺言書の全文,日付,氏名を自書し,押印して作成するものです。

② 公正証書遺言は,公証人役場に赴き,証人2人の前で,公証人に遺言内容を口頭で述べる方法で作成するものです。公証人役場で行う手間や費用がかかりますが,形式面についての誤りを避けることができます。

③ 秘密証書遺言は,遺言内容を記載したもの(パソコンで作成し印刷したものでもOK)に遺言者が署名押印し,封じ緘した上で,遺言書に押印した印鑑で封印したものを,公証人役場で公証人及び証人2人の前に提出して,確かに自分の遺言書であることを述べ,遺言書が存在することを証明する手続をします。これは,遺言内容を秘密にしたいときに用いられますが,公証人役場で行う手間や費用がかかる上,今回テーマから外れますので,ここでは説明を省略します。

 

2 自筆証書遺言の書き方

それでは,今すぐ作成できる「自筆証書遺言」についてご説明いたします。

 

遺言書

私は,全財産を●●に相続させる。

〇〇県〇〇市〇〇番地〇〇マンション〇〇号室

                △△△△   ㊞   

簡単に書くと↑のようになりますが,今回は,あくまでも家族の紛争を回避するということが目的なので,もう少し内容を考えなくてはいけません。

例えば,子どもが複数いる場合に,遺言者の住んでいる不動産は長男に,もう一つもっている不動産は次男に,預貯金は全て長女に譲りたいだとか,遺言者の財産構成や家族構成によってあらゆるバリエーションが考えられます。

そして,配偶者や子どもなどの推定相続人にも,ニーズがあります。例えば,名古屋に住んでいる長男に,北海道の不動産をあげると言っても,長男も処分に困ってしまいますし,このような不動産の立地等についても不公平感を生ずる種になります。

このように,遺言者の希望がある一方で,それをもらい受ける方の希望もあります。本来,遺言書は,遺言者の意思を遺すものなので,相続人の希望を受け入れる必要はないのですが,家族が今後も仲良く暮らしていけるように環境を整えておくという意味では,相続人の希望もある程度配慮しておく必要があるでしょう。

そうすると,遺言書を書くにあたっても,配偶者や子どもたちなどと相談しておくということが重要となります。

 

さて,誰に何を譲るか決まったところで,いよいよ遺言書を作成することになります。作成には以下のことに注意しましょう。

 

① 誰もが読める字で書くこと

遺言書は,金融機関や法務局等相続手続を要する機関に提示されますので,誰もが読める字で書きましょう。

② 氏名を正確に書くこと

譲り受ける者を正確に特定するために,ニックネームや愛称を用いず,正確に氏名を書きましょう。続柄や誕生日,住所等も書くことができればベストです。

③ 遺言者一人に遺言書一つ

いくら夫婦の仲がよくても,2人以上の者が同一の遺言書に遺言をすることはできません。一緒に作成しても構いませんが,別々の遺言書を作りましょう。

④ 修正ペンは使わない

 記載内容を間違えて訂正する際,文字を追加する場合には,{(波カッコ)で挿入し,間違えた場合には,変更箇所に二重線を引き,その付近に訂正後の内容を追加し,二重線部分に押印をします。その上で,「本行〇字加入○字削除」ないし「〇〇記載部分を××に変更した」旨記載し,署名します。明らかな誤記の訂正については,遺言の効力に影響しませんが,記載内容の訂正について訂正方法に誤りがあると遺言が無効となる可能性があります。不安な場合には,書き直したほうがいいかもしれません。

⑤ 遺産の内容は正確に

遺産が正確に特定できないと,相続人に手間を掛けてしまう可能性があります。そのような自体を避けるために,不動産は登記の記載のとおり書き,預貯金は金融機関や種類,口座番号,有価証券は,銘柄や株式数を明記して,正確に特定しておきましょう。

 

遺言書を書き終えたら,保管をしましょう。厳重に保管しすぎて,相続人が遺言書を発見できないことには,ならないように注意しましょう。

 

3 遺言の撤回について

ところで,遺言はいつでも撤回できます。後々遺言書を改めて作成した際に,前の遺言書と新しい遺言書の内容が抵触する場合には,抵触する範囲で,前の遺言が撤回されたとみなされます(同法1023条)。また,遺言者が遺言書を故意に破棄した場合は撤回したものとみなされます(民法1024条)。そのため,完全に書き換えるには,遺言書を改めて作成し,前の遺言書を破棄する必要があります。

なお,遺言書を作成した後に,遺言書に記載されている財産を処分した場合には,その処分した財産についての遺言は撤回されたとみなされます(同1023条2項)ので,相続を待たずに生前贈与したというような場合には,特段遺言書を書き換える必要はありません。

 

おわりに

以上のように,自分が亡くなった後の家族内の紛争を少しでも回避するための方策として,遺言書についてご説明してきました。

もっとも,遺言書をしっかり書いた場合であっても,兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者,子,子が居ない場合の父母)については,遺留分が認められていますので,遺言書の内容が法定相続人の遺留分を侵害するものである場合には,侵害されている法定相続人は,遺留分減殺請求権を行使して,相当額の遺留分を受領することになります。

紙幅の関係上,遺留分の説明は別の機会に譲りますが,遺言書を書くに当たっては,遺留分についても配慮できると紛争の火種を一つ減らすことが出来るでしょう。

遺言は,15歳以上であれば,成年被後見人や死亡の危急に迫った方でも,一定の条件のもと行うことができます。

後のご家族の平穏のために,遺言書の作成について考えてみてはいかがですか。

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